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海外金融業界動向「重点6分野に関連した海外金融機関の動静」

2006年12月25日(月曜日)

現在、富士通は情報通信技術を活用することでお客様の経営課題や関心事を解決するためのご支援をすることを念頭に置きながら、以下にご紹介する『重点6分野』への取り組みをグループ一丸となって積極的に推進しています。その『重点6分野』を具体的に申し上げると、「1.インフラ最適化」、「2.IT運用の向上」、「3.安心・安全」、「4.内部統制・環境」、「5.システム構築の効率化」および「6.ユビキタス」です。そこで、今回はこれらの6つの観点を踏まえて、欧米の金融機関がどのようなスタンスで取り組んでいるのか、順不同とはなりますが、いわゆるCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を対象としたアンケート結果を中心にご紹介したいと思います。

1. 「インフラの最適化」、「システム構築の効率化」そして「IT運用の向上」

欧米の金融業界でも収益力の回復を背景として積極的なシステム投資が始まっています。その重点分野は「BIS第二次規制/コンプライアンス」を始めとして、「勘定系/営業店システムの更改」まで非常に多岐にわたっています。

まず、システム・インフラすなわちシステム基盤という点に着目すると、わが国でも関心が高まっているSOA(Service Oriented Architecture)への取り組みが始まっているようです。同時に、いわゆる勘定処理と並行して、顧客プロファイリングの変化などのイベントに対応してセールス活動をキックするためのEDA(Event Driven Architecture)と呼ばれる仕組みも組み合わせる傾向も見られます。

次に、いかにシステムを効率的に構築するかという点については、やはりアウトソーシングの活用が全般的に浸透しているようです。特に、新規のソフトウェア開発やハードウェアのホスティングなどで利用が進んでいるようです。

一方、ますます複雑化するシステムの運用については、アウトソーシングがかなり活用されています。特に、ITサービスマネジメントの「ベスト・プラクティス」として包括的なガイドブックとなっている「ITIL® (ITIL® is a Registered Trade Mark of AXELOS Limited)(Information Technology Infrastructure Library)」は、ITサービスの管理に係わる業務プロセスや手法を体系的に標準化したもので、ITに関する社内規則や手順などを設定ないし見直す際のガイドラインとして活用されています。

2. 「ユビキタス」、「安心・安全」そして「内部統制・環境」

さて、情報通信技術の進展によって金融取引の方法もかなり変わってきましたが、利便性が高まるというメリットが享受できる反面、さまざまな脅威やリスクも増大する傾向にあります。そうした意味で「両刃の刃」でもある情報通信技術をどのように適用しつつあるのでしょうか。

まず、「ユビキタス」という点について言えば、金融機関の経営戦略として「顧客指向」を鮮明に打ち出す中で、特に決済サービスを巡る「通信キャリア会社」との競争が激化しています。わが国でも既に見られるように、携帯電話が決済手段として利用され始めており、金融機関としてはインターネットのみならず、モバイルの世界でも顧客接点の拡充が急務の課題となっています。

次に、「安心・安全」という点では、こうしたITを活用した新たな金融サービスが次々と登場する中で、取引の安全性や信頼性の確保が後追いになる傾向が見られ、個人情報などのプライバシーの確保と同時に、バイオメトリックスなどを応用した利用者の認証サービスの堅確化や二重化などさらなる万全なセキュリティ対策が講じられつつあります。

最後に、「内部統制」については、財務取引に対する牽制のみならず、犯罪やテロ活動などの反社会的な行為を金融面から取り締まるために送金取引などのチェックが厳格化されつつあります。

3. わが国金融業界にとっての示唆

以上、ご紹介してきたように、海外の金融機関でもこれら「重点6分野」への問題意識は経営戦略に照らし合わせて極めて高いものがあります。今回は紙面の制約でそれぞれ具体的な取り組み事例を十分にはご紹介できませんでしたが、わが国の金融機関として今後の情報システム化戦略を企画・検討する上で参考にすべき点を以下に述べたいと思います。

第一には、長らく続いた不良債権処理のためにわが国の金融機関では情報システムの老朽化が進んでしまいました。その過程で進展した「自由化」や「規制緩和」などを踏まえた新たな法制度を前提に「システム基盤」と「アプリケーション構造」の整備に取り組むべきでしょう。第二には、まさに「ユビキタス社会」の到来によって、新たな金融取引を「安心・安全」に行うためのセキュリティ対策が急務です。そして、最後に、第三として、一昨年末に発表された『金融改革プログラム』が求めているように、「顧客志向」を起点とした利用者サービスを実現するための戦略的なIT活用を図ることが必要です。

かつて、わが国の金融機関は約10年サイクルでかなり抜本的なシステム更改を行ってきました。今後、あのような大胆なスクラップ・アンド・ビルドを行うことは難しくなるものと思われます。巷間、いわゆる「2007年問題」として懸念されているベテラン技術者の現役第一線からの引退が目前に迫る中、現行システムからあるべき姿へのマイグレーション・シナリオの策定とそれを踏まえた具体的なアクション・プランの実行が今まさに喫緊の課題となっています。

重点6分野に関連した海外金融機関の動静 [428KB]


田村 雅靖(たむら まさやす)
金融コンサルティング事業部 プリンシパルコンサルタント
1979年富士通(株)入社。1986年(株)富士通総研へ出向。銀行、証券、保険及びノンバンク(クレジット・信販、リース)など広義の金融業界の顧客向けに「経営管理」や「マーケティング」などのアプリケーション企画、ソリューション企画等を中心としたビジョン策定型、問題解決型コンサルタントとして活動中。
中小企業診断士、システム監査技術者、特種情報処理技術者、富士通コンサルタント認定資格:シニアマネジングコンサルタント(経営)