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大学改革に向けて

2005年7月12日(火曜日)

大学を取り巻く環境

大学を取り巻く環境を見ると、文部科学省は、大学評価を実施しながらその評価が高い大学に多くの補助金を支給するという施策を展開していますし、少子化・2007年全入時代を目前にその様態が問われ、「健全な大学運営」「大学経営」へ向かっていると言えます。大学とお付き合いさせていただく中でも、今、大学の現場は大きな変革期に入っているなと実感させられております。ただ、変革しつつある大学と変革の必要性を感じながら旧態依然として変革しきれていない大学があるというのも確かです。グローバル化・ボーダレス化といった世界的な潮流の中、また国内の産業構造の変化や少子高齢化などに対応し、国立大学の法人化も含めて、大学も大きく改革していく、いや、改革せざるをえないイナーシャ(慣性)がかかっているのでしょう。

平成15年5月に文部科学省から、
(1)「個性」と「能力」の尊重  ~多様な人材の育成~
(2)「社会性」と「国際性」の涵養  ~真の教育の涵養と国際・社会貢献~
(3)「多様性」と「選択」の重視  ~競争的な環境の中で個性輝く大学づくり~
(4)「公開」と「評価」の推進  ~教育研究の質保証システムの確立~
の4つの理念に基づく「教育の構造改革」が発表され、『画一と受身から自立と創造へ』という方針を打ち出しています。潮木守一さんが書かれた「世界の大学危機」(中公新書)には、『企業社会での変化、特に雇用システムの変化に応じて大学に要求されることも変わる、大学は一種類という思い込みは通用しない』と書かれています。他の要素も含め、大学毎にどのようなミッションをもって経営に当たるか、ということがそれほどポイントになっているということでしょう。

大学の課題と対応

大学の課題はいろいろありますが、経営という観点から見ると、(1)中期計画・目標達成に向けたアクションの明確化と管理、(2)経営管理の本格的な運用、(3)第三者評価への対応、などがあり、本格的な経営管理の仕組みの構築と運用が急務になっています。その対応の一つとして、ある大学でのITグランドデザイン策定を支援させていただいたのですが、その支援プロセスとは、中期計画に基づいて、外部環境・内部環境分析としてSWOT分析を行い、BSC戦略マップ・目標施策体系を作成し、アンケート結果も踏まえたビジョン策定、テーマ抽出・内容定義・評価を行い、新システム構想とアクションプランを作成する、というものでした。大学の業務プロセスを大きく「学生サービス」、「教育」、「研究」、「経営管理」の4機能に分類してみると、「学生サービス」では、如何に学生満足度を高めるか、「教育」・「研究」では、その成果を如何に世の中に出すか、「経営管理」では、業務効率を上げ、如何に迅速に意思決定を行うか、また如何にそれらを有機的に全体最適になるような経営に結びつけていくかということが問われていることがわかりました。これに対応し、大学価値の創造に向けて、学生・教員・職員が三位一体となった経営と、情報メディアを統合した新しい情報システムが求められます。そういった課題が大学業務プロセス全体を俯瞰して明確になり、大学の総意を得て改革を実行に結びつけていくのにも役立つことになります。

ある大学の方と話をしていて、「これからの大学経営を考えるにあたり、こういった活動を展開していくことは必須だが、今をベースに考える改善だけでなく、破壊をベースに見直していくことも大いに必要なのではないか」と言われました。日本の環境が変わり、グローバルな競争が始まる中で、問われていることの多様化を十分認識し、具体的な活動に結び付けていく、ということが大切なのではないでしょうか。


藤野  誠治(ふじの  せいじ)
第一コンサルティング本部所属
公共系、特に大学の経営、ITグランドデザイン策定、業務分析などのコンサルティング活動を実践