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コンサルタントを見分けるチェックポイント

2005年5月30日(月曜日)

最近、新規事業戦略を策定したり、現行事業で飛躍的な拡大を目指した戦略を設計しようとしたりする際に、外部のコンサルタントを活用されるお客様が多くなってきています。今回はそういった事業戦略を考えるときに役立つ「コンサルタントを見分けるチェックポイント」について、いくつかご指摘したいと思います。

まずは、基本的な最低限のチェックポイントからお話しします。

第一に、『会話内容の本質を正しく理解できるコンサルタントかどうか』を確認しなければなりません。優れたコンサルタントは、たとえ業界知識がないとしても、会話を進める中でビジネスの本質を素早く把握していくものです。一を聞いて十を想定し、物事の本質を正しく理解できる人物かどうか、それを会話の端々で確認することが必要となってきます。そこを見極めるには、ある程度こちらの情報を提供した後でコンサルタント側から質問させることが効果的です。その質問のレベルがコンサルタントの理解度を表すのです。例えば、「先ほどおっしゃった意味はこれこれこういうことですか?」とコンサルタントから確認された時、「そうそう、その通り!自分ではうまく表現できなかったが、言いたかったのはそういうことなんだよ!!」と実感させられたかどうかです。ここで、「間違ってはいないが、ピッタリとは表現されていないな・・・」と感じさせられることが何度か続く場合は、コンサルティングの結果も同様の結果になる可能性があると用心すべきでしょう。

第二は、『戦略を論理的に組み立て、表現できるかどうか』です。斬新なビジネスのアイデアも論理的に緻密に表現されなければなりません。なぜなら、戦略実行には自社のトップ陣が当該戦略について共通認識に達する必要があり、その為には論理的に表現された企画書が必要だからです。注意すべきは、口頭では論理立てたように話せても文章で書くことができないコンサルタントに当たってしまった場合です。最悪の場合、コンサルタントに依頼した部署の担当者が自社のトップ陣向けに一から書き直すことにもなりかねません。そこを見極めるには、執筆記事や論文など、コンサルタントが過去に書いたものを見せてもらうことをお勧めします。「最初から読んでわかりやすくスンナリ頭に入ってくるか?」「論理的な矛盾はないか?」「同じ内容について言葉を違えて曖昧に表現していないか?」などの点についてチェックしてください。

さて、これまでは基本的な最低限のチェックポイントについて説明しましたが、ここで想定している場合のように、新規事業戦略の策定や現行事業拡大戦略の設計においては、その業界知識よりもむしろ『成功するビジネスを見極め、発想する能力があるかどうか』が重要になってきます。業界に関する情報は別の方法やルートで調達すればよいのです。それよりも、新規事業にしろ拡大事業にしろ、そのビジネスのターゲットとなるお客様の感覚をいかにバラエティ豊かにリアリティをもって想像できるか、ということがキーになることが多くあります。成功するビジネスは、海外の成功事例や市場の統計数値といった机上の論理からはなかなか生まれてきません。むしろ、自分がそのビジネスによる商品やサービスを利用する顧客だったら何を望むか、他社からどんなサービスが提供されればそちらになびくか、といったことからスタートして、自分だけではなく様々な種類の顧客を想定し、その顧客の感覚を実感に近い形で想像できることが必要なのです。この「顧客想像力」の広さと深さが、ビジネスの成功を見極めるセンスの土台になることが多いのです。

コンサルタントにこのような想像力が備わっているかどうかを見極めるのは容易ではありませんが、当該ビジネスのターゲットイメージを聞かれたコンサルタントが「いかに生き生きと自分の言葉でターゲットの心理や行動までを語るか」ということで概ね判断することはできます。例えば、あるサービスのターゲットについて「子持ちの主婦」という表現しかしないコンサルタントは全くの論外であり、「子供を幼稚園の年少組に通わせ始めた主婦で、余裕ができた時間を自分の楽しみに使いたいと考えているが、それが何かはまだみつけていない層」といったように具体的に表現するコンサルタントには、より高い可能性が感じられます。これは消費財に限ったことではなく、産業財やサービスにおいても同じです。

今回は、事業戦略策定時に役立つ「コンサルタントを見分けるチェックポイント」についていくつか説明しましたが、お客様にとってコンサルタントは戦略を共に作り上げていく親密な相談相手となる重要な存在です。業界知識や経験が豊富であるといった一面的な基準で決してコンサルタントを選んでしまうことのないよう注意していただきたいものです。


藤井 哲志(ふじい さとし)

流通コンサルティング事業部所属
事業拡大、新規事業、新製品・新サービスに関する企画立案、戦略策定、展開支援など業種・業態にとらわれない幅広いコンサルティング活動を実践
富士通コンサルタント認定資格:プリンシパルコンサルタント(経営)