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世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2018参加報告(その2)

世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2018参加報告(その2)
               

〜古くて新しい問題、“Financial Wellness”に向き合うFintech企業〜

2018年8月1日

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前回に引き続き、今回もFinovate Spring登壇企業のご報告をさせていただきます。今回のFinovateでは、PFM(Personal Financial Management:個人資産管理)といったFintechでは比較的古くから存在するサービスに再び注目が集まっていました。PFMは、既に日本においてもマネーフォワード、マネーツリーといったFintech企業によりサービス提供がなされており、金融機関との提携事例も増えています。米国では、同サービス分野の代表的な企業であるMintが約1500万人のユーザーを獲得するまでに成長するなど、サービスとしてやや成熟した感があります。このように日米で日常的なサービスとして定着しつつあるPFMですが、今回のFinovateにおいて再び注目を集めた背景には、“Financial Wellness”と呼ばれるキーワードが大いに関係しています。Financial Wellnessとは、人々が安定した生活を送るために経済的にも良好な状態にあることを指し、日常の生活において安定的な収入を得、計画的な支出と貯蓄を行うことで将来に向けた資産形成が行える状態を言います。調査によれば、米国の家庭の60%余りの人々が平均して500ドル以下の貯蓄しか有しておらず、病気やけがといった突然の出費に対して全く対応できないとされ、Financial Wellnessとはかけ離れた状態にあると言われています。以下では、Financial Wellnessの向上を目的としたサービスを提供するFintech企業をご紹介いたします。

自身と同じ階層の人々とお金の使い方を比較 -Status Money -

最初にご紹介するのはStatus Moneyです。同社のサービスは、自身のお金の状況を他人と比較することでより良い金融行動へとつなげることを目指します。利用者は、自身の銀行口座やクレジットカードを連携させることで財政状況を一覧で確認することができるほか、それら情報を他の利用者と比較することができます。例えば、ニューヨークに住む30代の男性は、資産としてどれくらいの預金や債券を有し、一方で負債はどの程度あるのか、さらにはクレジットスコアの平均値、日常の中で最も支出項目が多い費目とその平均額といった詳細なお金の使い方までを比較することができます。

同じ階層の人々とお金の使い方を比較することで利用者はより良い金融行動を行うよう考え方が変化していくと言われています。同社は、シカゴ大学と共同で金融行動の比較調査を行っており、実に23%もの人々がお金の使い方を自身と似た階層の人々と比較することで、その金融行動が改善されたとしています。金融機関側からすれば、同サービスを採用することで詳細なマーケティング情報が得られる他、利用者のFinancial Wellnessを向上させることにより金融サービスの利用拡大も見込めることとなります。従来のPFMサービスでは、利用者側にとって正確な情報を入力し続けるインセンティブが不足しており、当初は積極的にサービスを利用していたものの、数か月経った後に利用されていないことも珍しくありませんでした。Status Moneyが提供するサービスでは、同じ階層の人々とお金の使い方を比較できることで、PFMを継続的に利用するインセンティブを付与し、導入する金融機関にとってもメリットを生み出すことになります。

Status Moneyのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.1 Status Moneyのデモ画面 (筆者撮影写真より)

具体的なアクションを提示し、金融行動の改善を促す -Buckit-

続いてご紹介するBuckitは、クレジットスコアの改善に焦点を絞ったサービスを提供しています。既に多くの方がご存知のように、米国ではクレジットスコアと呼ばれる個人の信用状態をスコアとして表したものが広く普及しており、同スコアが低いと一部の金融サービスの利用が制限されます。米国では、約35%の人々がこのクレジットスコアの値が低い、いわゆる“サブプライム層”と呼ばれる階層に属しており、金融サービスを利用する上で様々な制約を受けています。Buckitでは、こうしたサブプライム層の人々に対し、クレジットスコアを改善する具体的な方法を教授し、経済的により安定した状態へと導くことを目指します。

同社のサービスではまず、住所や社会保障番号等の必要な情報を入力してクレジットスコアを連携し、更に銀行口座やクレジットカード/デビットカードといった日常的に利用している金融サービスに関する情報を連携することで、金融サービスの日常的な利用状況を分析します。その上で、クレジットスコアの改善のために必要な行動を導出し、利用者に働きかけていきます。例えば、普段利用しているクレジットカードにおいて多くの未払い残高が生じている利用者に対しては、具体的に、いくらの支払いを行うとクレジットスコアが改善するかを伝え、その支払いを促します。また、クレジットカード/デビットカードの費目を詳細に分析し、収支改善に向けた具体的なアクションを提示することも可能です。例えば、ファーストフード店での食事が多い利用者に対しては、それらファーストフードでの食事を減らすこと、更にはこれによりどの程度の効果が生じるのかについて教えてくれます。Buckitは、具体的な行動ベースでのアクションを提示することで利用者に実際の行動を促すことに主眼が置かれたサービスとなっています。

Buckitのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.2 Buckitのデモ画面 (筆者撮影写真より)

働く人のお金の不安を取り除く -Wealthucate-

最後にご紹介するWealthucateは、企業向けの福利厚生サービスとして従業員のFinancial Wellness向上を目指すサービスを提供しています。同社によれば、米国の従業員の半数は1日に3時間程度、自身のお金に関することで悩まされ、業務時間中であってもお金のやりくりに関して時間を取られているとしています。したがって、お金に関する悩みを持つ従業員が多くなればなるほど、企業における生産性は大きく棄損されることとなります。企業側もこうした従業員のお金に関する悩みに対してこれまで様々な対策を講じてきました。米国の企業の中にはフィナンシャルプランニングを福利厚生サービスとして導入する企業も多く、そうした企業においては、従業員一人当たりに対して月に500ドルもの費用が費やされているといわれています。Wealthucateでは、ほぼ自動化されたフィナンシャルプランニング機能により、月々15ドルあまりで従業員のお金の悩みを解決するサービスを提供します。

Wealthucateでは、年齢や利用している銀行口座等の情報から、従業員一人ひとりの財政状況を分析し、それぞれに見合った貯蓄プラン、また、退職後までを含めた資産運用プランといったアドバイスを提供します。これらのフィナンシャルアドバイスは、Wealthucateが独自に開発した分析エンジンを用いることで、人手を介さずに自動的に生成され、従業員はダッシュボード上でいつでも確認することができます。日本においては、多くの人々が老後の生活に不安を抱えながらも有効な資産運用方法がわからない状態にあります。企業が福利厚生の一環としてこうしたフィナンシャルアドバイスを提供することは、従業員のお金の面での不安を取り除く有効な手段として機能することが期待されます。

Wealthucateのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.3 Wealthucateのデモ画面 (筆者撮影写真より)

古くて新しい問題に対応するFintechサービス

今回ご紹介したサービスはいずれも、Financial Wellnessの向上を目的としたサービスとなっています。米国では古くから取り上げられてきたテーマであり、金融機関やFintech企業が度々取り上げるなど継続的に注目を集めてきたものですが、これまで有効なアプローチが確立できていませんでした。この “古くて新しい問題”であるFinancial Wellnessの問題を解決する上で重要となるのが機械学習に代表されるAIの活用です。今回ご紹介したサービスでは、どれも程度の差こそあれ、分析の精緻化を図ることに加えて、さらには具体的な金融行動の提案に踏み込んでいることが特徴です。冒頭でご紹介したPFMサービスMintについても、同様にAIを活用して単なるお金の管理にとどまらないサービスへと変化していくことを目指しています。サービス提供元であるIntuit社では、Mintで得られた個人のお金の使い方に関するデータと同社の主力商品である納税管理サービスTurbo Taxのデータを組み合わせ、機械学習によって個人のお金の使い方の傾向を分析し、信用スコアを向上させるアドバイスを行うサービスTurboの提供を始めています。米国ではミレニアル世代と呼ばれる主に20代から30代前半の若年層がその上の世代と比較して、お金の使い方に慎重であることも影響し、Financial Wellnessの向上に再び注目が集まっています。こうした社会的なトレンドに加えて、テクノロジーのトレンドが噛み合ったことが今回のPFMサービス“再注目”につながったものと考えます。

昨今のFinovateでは、登壇企業が紹介するサービスについて、その目新しさが無くなりつつあり、大半が既に見知ったサービスであるというのが現状です。しかし、一つ一つの提供サービスについては最新の知見、技術が採用され、少しずつ改善が図られています。かつてのように、登壇企業が目新しいサービスデモを紹介する場から、金融機関がすぐに採用可能なソリューションが紹介される場へと変化しつつあります。Fintechという業界が成熟しつつあり、より良い金融サービスの提供に向けて業界として着実に取り組んでいることの証左とも言えるでしょう。

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参考リンク

松原義明

本記事の執筆者

金融グループ
チーフシニアコンサルタント

松原 義明(まつばら よしあき)

 

2007年富士通総研入社。入社より一貫して金融業界向けのコンサルティング、調査業務に従事。 現在は海外金融機関における先進サービスに関する調査業務、国内金融機関におけるソーシャルメディア、スマートデバイス活用に関するコンサルティングを実施。 2016年4月 富士通研究所アメリカにてFintechならびに金融サービスの最新動向に関する調査活動に従事。2017年4月帰任。

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