GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. IdeaTank for Financial Services >
  4. 2018年 >
  5. 米国金融業界におけるスマートスピーカー活用

米国金融業界におけるスマートスピーカー活用

2018年5月8日(火曜日)

急速に普及するスマートスピーカー

毎年、年が明けて1月を迎えるとアメリカのラスベガスにおいて、IT業界、エレクトロニクス業界が注目するイベントであるCESが開催されます。CESとは、全米家電協会が主催するConsumer Electronics Showの略称であり、しばしばメディアにおいて世界最大の家電見本市といった紹介がなされます。近年では、家電といった枠組みを超えて、AIなどの最先端テクノロジーが一般の利用者の日常においてどのように活用されるのかを幅広く紹介するイベントへと変化しつつあります。

CESにおいて、近年最も注目を集めているデバイスがAmazon EchoやGoogle Homeに代表されるスマートスピーカーです。日本でも昨年から販売が始まり、急速に認知度を高めているスマートスピーカーですが、CESにおいても毎年その展示規模が拡大しています。米国では、既にその出荷台数が3,000万台を超え、Amazonではホリデーシーズンになると品切れを起こすほどの人気となっており、関係者からは「(スマートフォン以来の)10年に1度のヒット商品」といった声も聞かれます。事実、2015年に販売されてからのスマートスピーカーの販売台数の伸び率はiPhone以上であり、急速に家庭に普及していることがわかります。(図1)2018年2月にはAppleからもスマートスピーカーが販売され、一部報道によればFacebookも2018年の夏ごろを目途に「Facebook Portal(仮称)」と呼ばれるスマートスピーカーを販売予定であるとされています。

写真1
図1. スマートスピーカーとiPhoneの出荷台数推移比較

米国においてスマートスピーカーが急速に普及した背景として、端末に対して話しかけるとそれに対して応答するという目新しさ、誰もが利用できる簡単さ、使いやすさが挙げられる他、スマートスピーカーに対して独自のアプリを導入することでその機能を強化できるカスタマイズ性も普及の背景にあると考えられます。事実、米国で最も普及しているスマートスピーカーであるAmazon Echoでは、Alexa Skillと呼ばれる独自の機能強化アプリが既に20,000を超えて提供されています。(2017年第4四半期時点) Alexa Skillは、その開発ライブラリが無料で公開されており、ライドシェアサービスのUberやPizza Hutなど数多くの有名企業が自社のサービスを呼び出せるスキルを開発しています。

金融機関においても同様に自社のサービスと連携したものが数多く登場しており、米国金融機関によるAlexa Skillの登録数は40近くにまで増加しています。日本国内においても昨年11月に招待制ながらAmazon Echoが販売されると同時に、多くの金融機関からAlexa Skillの提供が行われました。以下では、米国において金融機関がどのようにAlexa Skillを活用しているかをご紹介していきます。

米国金融機関におけるAlexa Skill活用の特徴

前述のとおり、米国では40近くもの金融機関がAlexa Skillを公開しています。(表1) 日本においては、2018年3月時点で14の金融機関/関連会社がAlexa Skillを公開しており、米国ではその3倍近くの金融向けAlexa Skillが公開されていることになります。

表1. 米国においてAlexa Skillを提供する主な金融機関
写真1

このほかにも個人や小規模なソフトウェア会社等が金融関連のスキルを数多く公開しており、金融に関連したスキルというくくりでは、優に1,000を超えるスキルが公開されているものと考えられます。これら公開されているスキルの中で特に目立つものとしては、マーケット情報やそれに関連したニュースを提供するもの、金融・投資用語を教えてくれるもの、不動産市場/価格や関連ニュースを伝えるもの、そして仮想通貨の取引価格について伝えるものが挙げられます。

金融機関が公式に提供するAlexa Skillでは、自社のサービスと連携しているものが多い印象です。例えば、銀行が提供するSkillの多くは、自行口座と連動させ、Amazon Echo上で話かけることで残高照会や入出金明細の確認が行えます。この他、クレジットカードを発行している銀行のサービスでは、請求額の確認やAmazon Echo上でその請求額の支払いが可能となっています。また、ルーティングナンバーと呼ばれる銀行送金時に必要なコードや支店の場所、店舗の営業時間を確認できるといった機能が用意されています。保険会社が提供するAlexa Skillでは、保険料の確認やその支払いなどに対応しています。証券会社のサービスでは、市況の確認や個別銘柄の株価検索など、どれも自社サービスと親和性の高いサービスが提供されているのが特徴です。

このように金融機関のSkillの多くは、残高照会確認やそれに関連しての支払い機能が備わっていますが、更にクーポン提供やフィナンシャルアドバイス機能を付与しようといった動きも見られます。

American Expressでは、クレジットカードを提供している他の金融機関と同じく、請求額の確認やその支払いが行えるほか、クレジットカードの利用状況から利用者一人ひとりに合ったクーポンを提供するサービスを行っています。利用したいクーポンをAlexaに対して告げると自動的にクーポンが適用され、次回のクレジットカード利用時に自動的にクーポンが適用されます。これは、Card Linked Offerと呼ばれる米国のクレジットカード会社でよく提供されているサービスですが、Alexa Skillを利用することでその利用率を高めようとしています。

また、米国の軍関係者向け金融機関であるUSAAでは、ミシガン大学に所属する現役教授が起業したAI企業Clincと提携して、Alexa Skillで利用できるフィナンシャルアドバイスサービスの実証実験を行っています。利用者は、Amazon Echoに対して、例えば、「今月、口座にある500ドルを使って新しいスマートフォンを買いたいのだけど大丈夫?」と話しかけると、「あなたの毎月の家電製品の支出額は平均して600ドルです。今月は、50ドル利用したので、予算の範囲内です。」というように利用者の財政状況を確認してアドバイスが行える機能を実装することを目的に開発が進んでいます。このような技術開発が進めば、今後はスマートスピーカーが利用者一人ひとりのフィナンシャルアドバイザーとして機能することが可能となるかもしれません。

スマートスピーカーは金融機関にとって新たな顧客接点となり得るか?

スマートスピーカーは、その出荷台数が順調に推移し、また、多くの金融機関がAlexa Skillを公開するなど、一般世帯に急速に普及している感があります。しかし、今後、スマートフォンなどに代わって利用者との重要な顧客接点となるにはもう少し時間が必要なようです。少し古いデータとなりますが、2016年9月に米国の金融サービス会社ExperianがAmazon Echoの利用者に対して調査したところ、多くの人がAmazon Echoで最も利用する機能は、「タイマーセット」(84.9%)と回答しています。次いで多くの人々が利用しているのが、「音楽を聴く」(82.4%)であり、この他、「ニュースを聞く」(66.0%)、「アラームをセットする」(64.2%)と続きます。また、2人に1人がAmazon Echoをキッチンに設置していると答えており、これは、リビングに設置すると答えた人よりも多い数値となっています。これらは、Amazon Echoが販売されたばかりの頃に調査した結果であり、現在の利用状況とはやや異なっているかもしれません。しかし、この調査結果から、Amazon Echoなどのスマートスピーカーはその用途が限られ、タイマーセットやアラームセットといった単機能での利用、もしくは音楽を聴く、ニュースを聞くといったちょっとした空き時間に暇つぶしで利用されていることがわかります。Amazon Echoを利用して積極的に何らかのサービスを呼び出し、活用するといった形での利用は未だ一般的ではないと考えます。

現状、金融機関が提供しているAlexa Skillに当てはめて考えてみた場合、残高照会や市況ニュースの提供などは、特殊な音声コマンドを必要とせずに利用できるのであれば、思いついたときに気軽に利用できる有用なSkillになると考えます。しかし、スマートスピーカーを通して、利用者がローンや資産運用の相談といったより込み入った相談を行うような利用シーンは未だ想定しづらいように感じられます。今後、スマートスピーカーが利用者の主要な顧客接点として機能するためには、利用者一人ひとりの生活シーンに合わせて最適なタイミングで情報提供、サービス提供が行えることが必要となるでしょう。例えば、朝起きた際にニュースや天気と合わせて、昨日の支出状況をお知らせする、運用している債権の市況予測についてお伝えするなど、利用者が日常生活の中で自然と金融サービスにアクセスできるような提供形態が求められます。今後、スマートスピーカーにおいて用途開発が進み、より利用者との自然なコミュニケーションが可能となった際、利用者と金融機関をつなぐ主要な顧客接点へと進化するでしょう。

(チーフシニアコンサルタント 松原義明)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。

富士通総研 Facebookページ「Ideatank for Cross Industry Business」:
https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク