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世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Europe 2018参加報告

~オープンバンクがもたらす金融サービスの多様化~

2018年5月8日(火曜日)

弊社では2012年より、毎年開催される世界最大級のFintechピッチイベントであるFinovateに参加しています。すでに多くの国内メディアでも取り上げられているFinovateですが、Fintech向けのピッチイベントとしては世界有数の規模を誇り、世界各国から多くの参加者でにぎわいます。毎年、イギリスのロンドンで開催されるFinovate Europeは、ヨーロッパ中からFintech企業が集まることもあり、ヨーロッパにおけるFintechのトレンドを探る上で大変有効に機能します。本年のFinovate Europeより、他都市のFinovateと同じく4日間のイベントとなり、うち前半の2日間はFintech企業によるピッチであるDemo Sessionが行われ、後半の2日間は、カンファレンスやセミナーを中心としたイベントとなっています。Demo Sessionの参加企業は前年と大きく変わらず68社が参加しています。本年から会場がロンドン郊外のカンファレンスセンターへと移ったこともあり、会場の雰囲気も大きく変化しました。また、参加者自体は例年通りであるものの、会場でお見かけする日本人は少なくなった印象です。これにはFinovate Europeの翌週にMoney 20/20 Asiaが開催されるなど世界各地で類似のFintechイベントが多数開催されていることが影響しているかもしれません。

Demo Sessionの登壇企業ですが、ロンドンで開催されていることもあり、ヨーロッパからの企業が多いことが特徴です。活用技術としては、多くの企業が機械学習や深層学習に代表されるAI技術を活用したサービスの紹介を行っており、その多くが金融機関を対象としたものとなっています。また、中には現在注目を集めているICOを対象としたサービスを紹介する企業もあり、うまく流行を採り入れた企業が多いことも特徴です。サービスのトレンドとしては、2018年1月より本格的に施行されることとなったPSD2(欧州決済サービス指令)を受けて、金融機関が同制度を活用し自行のサービスをより高度化するための方策を様々に示しているのが特徴です。PSD2の概要については、既に日本においても各所で詳細に報じられており本稿では省略いたしますが、具体的にはその銀行口座、決済指図に関する情報について、正式に認可を受けた事業者であればAPI等を通じて安全にデータの連携を行うものです。同指令に伴い、欧州では銀行がAPIの整備を行うことが必要となり、オープンバンクが急速に注目を浴びています。以下では、このPSD2に伴い、銀行がうまくAPIを活用し、そのサービスを高度化する上で有効なサービスについて、いくつかのFintech企業のデモ事例からご紹介したいと思います。

「銀行のモバイルプラットフォームから異業種企業のサービスへアクセス -Backbase-

最初にご紹介するのは、オランダのFintech企業であるBackbaseです。Backbaseは、銀行向けデジタルフロントエンドソリューションを10年以上にわたり提供してきた企業であり、オランダの大手金融機関ABN AMROを始めとして欧米の金融機関を中心に100行以上で同社のデジタルフロントソリューションが採用されています。同社では、PSD2の施行を受け、金融機関が異業種企業とその情報をうまく連携し、顧客に対して新たな価値提供を行うデジタルバンキングプラットフォームであるCustomer OSを発表しています。

Backbaseが発表したCustomer OSは、銀行のデジタルプラットフォーム上からAmazonといったECサイト、航空会社、そしてフィットネス企業など多数の異業種企業のAPIを連携し、利用者の日常生活上の行動とそれに紐づく金融の行動を連携させ、新たなアクションを生み出すものです。例えば、仕事の関係上、出張が多い利用者に対しては、その航空会社からのフライト情報、宿泊予約サイトからの宿泊先情報、そしてその際に利用したクレジットカードの情報などを連携させることで、出張期間中におけるすべての明細が一覧で表示され、その経費精算を効率化することができます。この他、利用者がAmazonなどのECサイトで利用するクレジットカードを個別に設定し、そこに紐づくサブスクリプションサービスがあれば自動更新の有無を設定できるなど、その日常での利用を効率化することが可能です。

Backbaseのソリューションにおいて、銀行起点でこのような利便性の高いサービス提供が可能となる背景にはPSD2により、他行の銀行口座情報、クレジットカード会社の情報を集約し、一元的に管理できることが挙げられます。これに加えて、既にAPIを提供している異業種企業のサービスを組み合わせることでその利便性を大いに向上させていることが特徴です。

写真1
写真.1 Backbaseのデモ画面 (筆者撮影写真より)

Google PayとのAPI連携によるバーチャルデビットカード提供 -Google & KBC Bank Ireland-

続いてご紹介するのは、アイルランドの大手銀行KBC Bank IrelandがGoogleと連携して提供するインスタントモバイル口座開設アプリのご紹介です。モバイル口座開設アプリですが、既に日本国内の多くの金融機関において採用されているのは、多くの読者がご存知のことと思います。しかし、通常のモバイル口座開設アプリはあくまで口座開設のプロセスをオンライン上で再現したものであり、同アプリを使用して口座を開設したとしてもその日のうちにその銀行のサービスが利用できるわけではありません。このため、海外金融機関においてもモバイル口座開設アプリを提供する金融機関は多いものもその利用率は芳しくないとの評判が聞かれます。今回、KBC Bank Irelandでは、GoogleのAPIを活用することによりこうした課題を解消し、口座開設者を増加させる有効な手立てをご紹介しています。

KBC Bank Irelandが提供するモバイル口座開設アプリでは、現在流行しているダイアローグ形式のインターフェースを採用し、利用者の情報入力の容易さ、そしてそのプロセスのわかりやすさを意識していることが特徴です。また、本人確認にあたってはスマートフォンで公的IDの券面と自身の顔写真を撮影し、それらを照合することでその場で本人確認のプロセスが終了します。KBC Bank Irelandによれば同アプリによる口座開設に要する時間はわずかに5分であり、操作に慣れない、はじめて口座開設を行う顧客であっても簡単に利用できることが特徴です。そしてKBC Bank Irelandの同アプリでは口座開設終了後に即座にスマートフォンの画面上にデビットカードの券面が表示され、その場でカード番号が付与されます。つまり、バーチャルデビットカードがその場で発行されることとなっており、通常の口座開設アプリのように後日カードが郵送されるまで利用できないといった状態を防ぎます。更に同バーチャルカードはGoogleが公開するGoogle Payと口座情報を連携するAPIを用いて、NFC対応のアンドロイドスマートフォンであれば、その場でGoogle Payにカードを登録することが可能となっており、口座開設をしたその日からNFC端末を設置している小売店で利用できることとなります。

KBC Bank Irelandのモバイル口座開設アプリは他行のアプリと比較して、4倍もの利用者がいるとのことです。また、同行の5人に1人は新規口座開設にあたり、同アプリを利用しています。KBC Bank Irelandでは異業種企業によるAPIをうまく活用することで顧客獲得につなげていることがわかります。銀行のAPI活用という場合、情報を利用する側であるFintech企業や異業種企業側を利するものと言われていますが、銀行側もまた異業種企業のAPIをうまく活用することで自行サービスの拡大を目指すことができるかもしれません。

写真2
写真.2 Google & KBC Bank Irelandのデモ画面 (筆者撮影写真より)

PSD2を活用した異業種サイトでのローン提供 -ITsector-

最後にご紹介するのはポルトガルのFintech企業ITsectorによる融資分野に特化したソリューションです。同社は、金融機関向けに融資分野のソリューションを数多く提供しており、今回はPSD2の施行に伴い、金融機関の口座情報にアクセスすることが可能となったことをうまく活用し、異業種のサイトから銀行の情報にアクセスし、その場でローン提供を行うことが可能となるソリューションを紹介しています。

ITsectorでは、ローン提供に関する様々なソリューションを提供しており、特に融資にあたってのクレジットスコアリングに強みを有しています。同社のデモでは、例えば旅行予約サイトにおいてツアーを申し込む際にその不足分を即座にローンで提供するというユースケースが紹介されています。利用者は旅行サイトからローンを申し込む際、自身の銀行口座情報を両行サイト側に提供することを同意し、これに伴い連携された口座情報を用いて審査を実施し、その場でローンの提供を可能とします。これにより、金融機関側からは自行のプラットフォームではない外部プラットフォームからローンを提供することが可能となります。この他、ITsectorでは、自社のプラットフォーム上で他行の借り入れなどが一覧で分かるように表示し、その上で自行への借り換え等を促すユースケース等も紹介しています。

いずれのユースケースも、PSD2の施行に伴い、その口座情報へのアクセスが可能となったために実現したものです。ITsectorが紹介したユースケースからは、PSD2により単に自行の顧客の口座情報を外部に公開するだけではなく、これらFintech企業との連携により、外部の口座情報をうまく活用し、自行のサービスを提供する機会を拡大させることが可能になることを示唆しています。

写真2
写真.3 ITsectorのデモ画面 (筆者撮影写真より)

おわりに

今回ご紹介したサービスは、どれもAPI連携に伴い、自行のサービスを高度化し、顧客利便性を向上させることで結果として自行のビジネスを拡大させる方向へと導いているのが特徴的です。APIによる自行情報へのアクセス性向上は、本来、セキュリティの側面から大いに議論されてきており、金融機関にとっては、その顧客保護の側面から導入に向けた取り組みが始められてきました。PSD2においても同様に顧客保護の側面が最重視されているのは周知の事実です。一方で、これら顧客のデータが安全に連携されることでそのサービスが高度化され、新たな顧客獲得につながる強力なツールとなり得ることも考えられます。

今回のFinovateでは、この他にもPSD2を活用し、金融機関のサービスをいかに高度化し、その利便性を向上させるかに焦点を当てたサービスが多数紹介されていました。欧州の事例でもあり、そのまま日本の金融機関にこれらソリューションが当てはまることは少ないかもしれませんが、API連携により金融機関側の収益拡大に貢献することを目指した点は、国内銀行が改正銀行法を受けてAPI公開に対しての方針を打ち出す昨今、大変示唆に富むものではないかと考えます。Fintechというキーワードが金融機関に認知されてからかなり年数が経ち、今では地域ごとに独自にサービスを展開するFintech企業が多数誕生することとなりました。金融サービスは規制に大きく影響を受けるため、どうしてもその国ごとのローカルな側面を無視できないものですが、今回の欧州におけるオープンバンクに向けたスタンスのように他国の金融機関にとっても大いに参考となる事例も多数存在します。今後とも弊社ではこうしたグローバルなFintech動向より国内金融機関にとって示唆に富む事例を紹介していきたいと思います。

(チーフシニアコンサルタント 松原義明)

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