GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. IdeaTank for Financial Services >
  4. 2017年 >
  5. 世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2017参加報告(その2)

世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2017参加報告(その2)

~独自のサービスで新たな市場開拓を目指すFintech企業~

2017年6月19日(月曜日)

Finovate Spring 2017参加報告の2回目では、独自のサービスを構築し、新たに市場を開拓することを目指すFintech企業をご紹介したいと思います。Fintechというキーワードも今や一般に広く知られ、新聞・雑誌においても日常的に取り上げられることとなりました。金融機関においては、オープンバンキングといったキーワードの下、Fintech企業との協業を推進することで自行のビジネス/サービスの高度化を目指しています。Fintechと呼ばれる分野自体が“成熟化”した感があり、独自にサービスを提供するFintech企業が業界全体として減少傾向にあるように見受けられます。

これは、Finovateにも共通して見られる事象であり、顧客に対して直接的にサービス提供を行うFintech企業の登壇は年々減少しています。今回のFinovate Springでは顧客向けに直接サービスを提供するFintech企業は、59社中12社となり、残りの47社については基本的に金融機関を対象としてビジネスを展開するFintech企業となります。このような状況にも関わらず、顧客向けサービスを提供する12社の中では、これまでにない独自のサービスを展開し、新たな市場を開拓することを目指したFintech企業が存在します。今回はこうした独自サービスを展開するFintech企業をご紹介したいと思います。

ホワイトラベルでオリジナル仮想通貨を提供 -Leondrino Exchange-

最初にご紹介するのは、ブロックチェーンの仕組みを活用して特定の企業/グループ向けにオリジナルの仮想通貨(コイン)を発行するプラットフォームを運営するLeondrino Exchange(以下、Leondrino)です。同社のプラットフォームを利用する企業/グループは、Leondrinoにより発行されたコインを顧客やファンに提供することで、自社/自グループ内のサービスや特典に交換できるポイントプログラムと類似の仕組みを顧客に提供することができます。Leondrinoのプラットフォームを活用することで、企業や特定のグループ向けに低コストかつ即時でポイントプログラムを運営でき、また、ブロックチェーンの仕組みを活用することでセキュリティにも配慮されています。

Leondrinoによると、既に2社のスタートアップ企業が同社のプラットフォーム上でオリジナルのコインを発行しており、この他にも個別に交渉を行っている企業が複数存在するとしています。Leondrinoでは、これら企業ごとに発行されたコインが、最終的には株式上場に似た仕組みであるILO(Initial Leondrino Offering)により、同プラットフォーム上で広く一般に公開されることを想定しています。利用者側は、Leondrinoが提供するWalletでこれら企業のコインを一元的に管理し、必要に応じて他のコインと交換することができます。Leondrinoによると、あくまで利用者の利便性向上と企業/グループに対するロイヤリティ向上が両立できるエコシステムの構築が目的であり、これらコインはLeondrino側で実際の通貨と連動して管理し、投機目的での取引を制限するとしています。

写真.1 Leondrino Exchangeのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.1 Leondrino Exchangeのデモ画面 (筆者撮影写真より)

頭金無しでの住宅購入サポート -Unison-

続いてご紹介するのは、米国において一般の人々の住宅購入をサポートするUnisonです。米国では、2008年のリーマンショックを機に不動産価格が暴落しましたが、その後の景気回復も相まって、ここ数年、不動産価格は上昇傾向にあります。特に国内外から多くの人材を呼び寄せるカリフォルニア州のシリコンバレーといった地域では不動産価格が急騰しており、特に人気の高いサンフランシスコの場合、一般的な規模の住宅であってもその購入価格が100万ドルを超えることも珍しくありません。米国の場合、住宅購入にあたっては、頭金として購入価格の2割程度を支払う必要があり、頭金が用意できない場合は、その住宅が購入できないか、もしくは購入者がローンを支払えなくなった場合に備えて、高額の住宅ローン保険に加入する必要があります。不動産価格の高騰は必然的に頭金の必要額を押し上げることとなり、一般の人々にとって住宅を購入できない、もしくは住宅購入にあたっての選択肢が狭まる事態となっています。

Unisonでは、こうした高騰する米国不動産市場に目をつけ、住宅購入者が必要な頭金を市場から調達して提供するサービスを行っています。住宅購入のための頭金の原資は、年金基金などの長期で資産運用を行う機関投資家(年金基金等)が提供しており、これにUnisonの出資分を加えて、頭金として必要な額の半額を利用者に無利子で提供します。提供された頭金は、最大30年間は返済の必要がなく、満期後もしくは住宅の売却時に返済します。この時、住宅価格が購入時よりも上昇していた場合、その上昇額を頭金の出資額に応じてUnisonと利用者で按分し、住宅価格が下落していた場合、その損失額を按分します。米国ではその生涯において複数回、住宅の売買を行うことも珍しくありません。また、現状のように不動産市場が好調な場合、購入した住宅が大きく値上がりすることもあります。Unisonのサービスは、米国住宅市場における一般的な慣習に着目してサービスを提供することで、多くの利用者にとって恩恵のある仕組みとなっています。

写真.2 Unisonのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.2 Unisonのデモ画面 (筆者撮影写真より)

スタートアップ企業へのクラウドファンディング -Newchip-

最後にご紹介するのは、スタートアップ企業に対してクラウドファンディングによる資金調達の機会を提供するNewchipです。Newchipは、主にミレニアル世代を対象として、スタートアップ企業への投資を促すことを目的としたプラットフォームを運営しています。米国では、オバマ政権時代の2015年に通称JOBS Actと呼ばれる法案が成立し、一般企業がクラウドファンディングなどの手法を利用して資金調達を行うことが可能となりました。これに伴い、米国ではスタートアップなどの新興企業や個人・中小事業者に対して投資を行えるサービスが複数登場してきており、Newchipもこうした流れに沿うものです。

Newchipのサービスの特徴は、ミレニアル世代を対象として、スマートフォンで簡単にスタートアップ企業に投資が行える点です。利用開始にあたっては、利用者の興味のある領域(テクノロジーやサービスの特徴)といった情報を収集し、それを基におすすめのスタートアップ企業の情報をアプリ上で表示していきます。スタートアップ企業の情報は1枚のカードに集約され、利用者がその企業を気に入れば、スマートフォン画面を右にスワイプすることでお気に入りリストに追加され、左にスワイプすると興味がないと判断されます。利用者が気に入った、気に入らないといった情報や、更には、友達におすすめした企業、一つの企業情報に対する閲覧時間といった様々な情報がバックグラウンドで収集されており、これら収集情報を基に機械学習による分析を用いることで、利用者にとってより興味を惹くスタートアップ企業が候補として表示され、投資を促していくこととなります。右にスワイプするとお気に入り、左にスワイプすると興味がないという操作性は、米国において人気のデートアプリTinderの動作を参考に作られており、ミレニアム世代にとっての使いやすさ、とっつきやすさを意識したものとなっています。

写真.3 Newchipのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.3 Newchipのデモ画面 (筆者撮影写真より)

新しいアイデアを持つFintech企業が新たな市場を作り出す

今回ご紹介したサービスは、技術よりもアイデアを意識したFintechサービスであると言え、現在減少傾向にある一般の利用者に直接サービス提供を行うFintech企業です。一般の利用者に直接サービス提供を行う代表的なFintech企業には、決済サービスを提供するPayPal、その傘下でP2P送金サービスを提供するVenmoなどが挙げられ、その競合であるSquareなども含まれます。また、オルタナティブレンディングを手掛けるLending ClubやKabbageなども一般向けにサービス提供を行う代表的なFintech企業です。これらのFintech企業によるサービスは、2000年代の後半から2010年代の前半に登場して一般の人々の支持を得、新たな市場を切り開いてきた実績があります。伝統的な金融機関は、これら新興企業の参入に危機感を覚え、Disruption(創造的破壊)というキーワードがしきりに聞かれることとなりました。

2017年現在、こうしたFintechを巡る状況には変化が見られます。伝統的な金融機関のトップがFintech企業との協業を推進していることを公の場でアピールし、本邦金融機関においてもFintech企業との協業推進を伝える記事が何度もプレスリリースに登場しています。背景には、金融機関が前述の危機感から自行のサービス高度化のためにFintech企業との関係性を積極的に強化したことが挙げられます。また、代表的なFintech企業のサービスが各領域で“デファクトスタンダード”となったことも関係しています。決済の領域ではVenmoやSquare、融資の領域ではLending ClubやProsperと、それぞれの領域について利用者の支持を集めるサービスが固定化されつつあり、今後、これら領域で利用者に直接サービス提供を行うFintech企業が参入する余地は少なくなりつつあります。

一方、今回ご紹介したFintech企業のように技術的な目新しさは無いものの、新しいアイデアを基に新たに市場を切り開こうとする企業も存在します。これら企業のサービスが今後うまくいくのか、その成否は定かではありませんが、VenmoやSquareのように顧客の潜在的な需要を掘り起こし、新たなサービスとして定着する可能性も秘めています。Fintechが今後とも市場の注目を浴び、多くの利便性の高いサービスが生み出されるには、顧客に対して直接的にサービス提供を行う企業が断続的に登場していくことが必要であると考えます。Finovateをはじめとするスタートアップのピッチイベントにおいてもこうした顧客に対して直接的にサービスを提供する企業に注目していくことが重要かもしれません。

(シニアコンサルタント 松原義明)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。
富士通総研 金融・地域ページ: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク