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2014年、エンゲージメント・バンキング元年を迎える金融業界

~注目キーワードで予測する2014年の新金融リテールサービス~

2014年1月16日(木曜日)

明けましておめでとうございます。本年もIdeaTankをよろしくお願いいたします。新年最初のIdeaTankでは、2014年のリテール金融サービスの動向をキーワード単位で予測していきたいと思います。2013年は、モバイル決済サービスSquareが日本に進出を果たすなど日本の金融サービスにも大きな変化の兆しが見える1年となりました。2014年は、こうした金融サービスの変化が更に加速する1年ではないかと予測します。

ビーコン(無線標識)型決済が非接触決済のメインストリームに

昨年発表されたApple iOSの新機能であるiBeaconでは、店舗に設置されたビーコン(無線標識)からBluetooth通信を活用して、iPhoneに商品情報やクーポンを配信することができます。iBeaconには現在、決済機能は付与されていませんが、将来的には決済サービスに対応する可能性があります。また、オンライン決済サービス大手のPayPalでは、iBeacon同様、店舗に設置されたビーコンを活用して決済を可能とするPayPal Beaconと呼ばれるサービスを昨年発表しました。同サービスでは、スマートフォンのPayPalアプリで予めチェックインし、店舗に立ち寄って商品を手に取るだけで決済が完了します。PayPal Beaconは2014年中に正式サービスを開始することを目指して準備が進められています。これまでにiBeacon機能が利用できる最新のiOS7は、全世界で2億台以上のiPhoneおよびiPadにインストールされました。また、PayPalを毎月1回以上利用するアクティブユーザーは全世界に約1億3,000万人存在します。つまり、全世界で非接触決済をいつでも利用できる潜在的な利用者が一挙に3億人以上も誕生することとなります。これまで非接触決済サービスでは次世代規格であるNFCが主流になると言われていましたが、Bluetooth通信を用いたビーコンによる決済サービスがその座を奪ってしまうかもしれません。

Bitcoinが切り開く新たなグローバル決済ネットワーク

昨年、最も話題を集めた金融サービスといえば、Bitcoinではないでしょうか。2013年初頭、キプロスでの金融危機で一躍注目を集めたこの仮想通貨は、その後も世界各地で多くの話題を提供し、今や各国の金融当局がその動向を注視しています。Bitcoinとは、物理的な実体や中央政府の信任を持たないオンライン上のみで存在する仮想通貨です。匿名性が高く、大変安価な手数料で送金が行える点が注目され、時にはマネーロンダリングや違法サイトでの決済にも活用されるなど、負の側面も指摘されています。また、投機性が高いことも問題視されており、実通貨との換金において、その交換価値が乱高下することもあります。このように、多くの問題点が指摘されているBitcoinですが、これを新たな決済手段としてみた場合、その可能性は大いに広がります。現に、Bitcoinと類似のグローバル決済ネットワークがスタートアップの手により開発されています。Rippleと呼ばれる同サービスでは、参加者間で共通の擬似通貨を用いて決済を行い、また、その取引は全ての参加者に可視化されています。送金手数料はほぼ無料で利用でき、且つ、瞬時に決済が行えるこのサービスは、グローバルな決済の仕組みを大きく変えてしまうかもしれません。

ウェアラブル端末が切り開く顧客密着型の新金融サービス

Googleが昨年初頭に発表したGoogle Glassは大きなインパクトを持って迎えられ、今では世界中で様々なウェアラブル端末が開発されています。こうしたウェアラブル端末がスマートフォンに代わって、主要なコミュニケーション端末となるにはまだ時間がかかりそうですが、海外のいくつかの金融機関では、既にウェアラブル端末上で利用する金融サービスの検討・開発が進められています。例えば、MasterCardでは、Google Glass上に商品メニューを表示させ、口頭での指示により商品を購入できるサービスを実験しています。これには、Google Glassの主要機能の1つである自然言語処理技術が活用されており、利用者は言語によるコミュニケーションだけで簡単に操作が行えるのです。ウェアラブル端末と金融サービスが融合することで、顧客と金融機関の関係性はより親密なものとなり、利用者は、より直感的に金融サービスにアクセスすることができるようになるでしょう。

スマートフォンバンキング時代に必要となる銀行店舗の復権

スマートフォンの急速な普及により、多くのサービスがスマートフォンを中心に展開されることが多くなってきました。米国の金融機関では、顧客がスマートフォンを中心にサービスを利用することで、銀行店舗の来店客数が減少するとして、店舗を統廃合する動きが出ています。しかしながら、店舗での金融サービスを求める顧客は現在も一定数存在しています。米FRBが実施したモバイルバンキングサービスに関する調査によれば、過去1年間で最も多くの人が利用した銀行チャネルは店舗であり(84%)、これは、モバイルバンキングサービスやATMの利用率(いずれも74%)を上回っています。こうした動きを受け、米大手金融機関Wells Fargoでは軽量型店舗ともいうべき新形態の店舗を試験開業しています。この軽量型店舗は、同行の通常店舗の半分の敷地面積と運営スタッフで構成され、通常店舗のような窓口や事務スペースが廃止されています。スタッフはタブレット端末を活用して来店顧客の顧客情報を共有し、どの顧客であってもいつでも最適な接客が行えるよう心がけています。また、通常の金融取引は店内に設置されたATMと類似のセルフサービス型の取引端末で行われます。スマートデバイスをうまく取り入れ、セルフ取引を中心とした店舗の出現は、これからの店舗のあり方を大きく変えるものとなるでしょう。

エンゲージメント・バンキング元年を迎える金融業界

今回ご紹介した各キーワードで重要となるのは、顧客と金融サービスの距離感とタイミングです。各キーワードでご紹介した事例では、それぞれ、顧客の身近で金融サービスが提供されており、顧客にとって金融サービスに即座にアクセスできること、顧客の望むタイミングでサービスが利用できること、もしくは提供されていることが重要となっています。つまり、顧客が、これら金融サービスを日常生活の中で当たり前のように利用できること、換言すれば、顧客が金融サービスを特段意識しないで利用できる環境を構築することが必要なのです。こうした新たな金融サービスの利用形態を表すのが、本稿のタイトルで取り上げた「エンゲージメント・バンキング」です。エンゲージメントとは、顧客と金融機関との“絆”を意味し、顧客と金融機関とが強固な関係性で結ばれ、顧客の日常生活の様々な局面でごく自然に金融サービスが提供される状態を表します。今回ご紹介した各キーワードはこうしたエンゲージメント・バンキングを体現するものでもあります。これからの金融サービスでは、単に利便性の高いサービスを顧客に提供するだけでなく、日常の買い物など顧客の行動に沿って最適なサービスが提供されることが重要になると考えます。

(シニアコンサルタント 松原義明)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。

富士通総研 金融・地域ページ: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク

iBeaconと連動したEstimote社のビーコン紹介ページ : http://estimote.com/

PayPal Beacon 紹介ページ : https://www.paypal.com/webapps/mpp/beacon

Ripple 紹介ページ : https://ripple.com/

MasterCardによるGoogle Glassを用いた決済デモ紹介動画 : http://www.youtube.com/watch?v=euMQMD7kkpI

米FRBによるモバイルバンキングに関する調査結果(2013年3月) : http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/other/20130327b.htm

Wells Fargoによる新型店舗を紹介する記事(2013年4月) : http://www.bizjournals.com/washington/news/2013/04/10/wells-fargo-unveils-new-concept-branch.html