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【インタビュー】
経営を研ぎ澄ますためのデジマケ戦略

2015年頃から、製造業における「BtoB」分野でのデジタルマーケティング戦略の構築の重要性が叫ばれ始めている。だが、その実践と広がりのスピードは決して早くはなく、スローテンポである。

富士通総研は2016年9月、大手・中堅企業約800社を対象にした「デジタル化への認識とデジタルマーケティングの実態調査」を行った。

製造業では30.6%の企業が「BtoB」でのデジタルマーケティングを実施し、サービス業の38.1%ほどではないが、この大きな潮流の変化に対応しつつある。しかし、「成果をあげている」と答えた企業はサービス業では50.0%なのに、製造業ではわずか22.6%と大きな開きがある。

何らかの取り組みに踏み出し、その効果を実感している製造業は100社に6社ほどの割合しかないという計算になる。

富士通総研 田中 秀樹の写真

富士通総研 デジタルマーケティンググループ
シニアマネジングコンサルタント
田中秀樹
流通・サービスコンサルティング事業部 などにおいて、ネットビジネスや一般企業のマーケティング戦略を支援。2011年4月より新設のビジネス調査室で、ICTの先進的な活用の分析と提言に従事。

富士通総研 平田 由紀子の写真

富士通総研 デジタルマーケティンググループ
マネジングコンサルタント
平田由紀子
2001年より富士通株式会社にて業務改善コンサルティングに従事した後Webコンサルティングを担当。サイト戦略立案から運営まで幅広く支援する。2007年より富士通総研。近年は金融機関、製造業等様々な業種のお客様におけるデジタルマーケティング導入やグローバルサイト構築の支援を行っている。

取り組みが不十分な「BtoB」分野

「BtoB」でのデジタルマーケティング戦略は製造業に不可欠である、という考え自体がまだ目新しいという事情はある。「BtoC」におけるデジタルマーケティングなら、すんなりと腑に落ちる。しかし、製造業では「なぜやるのか」「どう進めるのか」「何が得られるのか」という問題意識や価値観がなかなか受け入れにくいという面もあるに違いない。

そもそも製造業には「いいものを作れば、それで売れる」といった考え方が根強い。マーケティングという手法にも、どこか懐疑的な面があるのかもしれない。現状は経営陣や現場にデジタルマーケティングの重要性の認識が浸透せず、共有されていないということなのだろう。

そうした状況に発想の転換を促すように、富士通総研デジタルマーケティンググループの田中秀樹シニアマネジングコンサルタント(以下、田中SMC)は、製造業が「BtoB」でのデジタルマーケティング戦略に取り組む意義を「経営全般においての内なる改革を促すものです」と語る。

富士通総研が実際に、コンサルタントとして戦略構築に携わった中堅メーカーA社の実例を以下に紹介する。

A社は実験的な意味もあって、ある事業部単位でのマーケティング・オートメーション(MA)の導入を計画した。この事業部はさまざまな機械に組み込まれる主要な電子部品を長年手がけている。幅広い取引先を有し、精密かつ高効率なタイプへの評価が高い。

「業界内で競争力はある」と自負してきたが、既存顧客の売上は伸び悩んでおり新しい顧客開拓は欠かせなかった。他社がデジタルマーケティングを活用して引き合いを伸ばしているという情報もあって、富士通総研にコンサルティングを依頼した。

潜在顧客のニーズを捉えたコンテンツが引き合いのカギ

マーケティング・オートメーションは新規顧客獲得や顧客管理などの一連の業務、そして複数の部署での連携を自動化、効率化させる仕組みだ。その仕組みの効果を発揮させるためには、自社のWEBサイトに集客力があるかどうかが重要になる。その場合、単に数多くの人を集めればよいわけではなく、将来自社の顧客になり得る潜在顧客に来てもらう必要がある。

WEBサイトで事業部が扱うあらゆる製品を網羅的に紹介すればいいわけではない。マーケティングの入り口であるWEBサイトの集客力を高め引き合いにつなげるためには、「潜在顧客が何を求めているか」と「ネット上の競合他社が何を訴求しているか」を捉え、検索サービスの上位にあがってくるようなコンテンツを用意することが大切だ。

田中SMCは「従来の企業のWEBサイトは会社の情報を載せておけばいい。あるいは、製品カタログをそのまま掲載しておけばいいものでした。でも、それはもう時代遅れです。ここでの集客力が本当に大きく影響することがわかってきたからです」と言う。製品が紹介されている、役立つだけではなく、ビジネスにつなげるWEBサイトが必要なのだ。

こんな話がある。

ある会社の長年の取引先がある日、ライバル社に製品を発注した。その製品は取引先にこれから売り込もうとしていたラインナップだったので驚いたし、落胆した。思い切って、長年の取引先に聞いてみた。

「どうして、うちに発注してくれなかったのですか?」
「いや、お宅がやっているとは知らなかったのですよ。わかっていたらね...」

日ごろ接触している営業マンも取引先に聞かれないと、売り込みはできない。

取引先はWEBで探してライバル社の製品が検索の上位でヒットしたので、そっちに問い合わせ、発注したということだった。

失注した会社のWEBサイトには当該商品は載っているが、あっさりした説明だった。これでは検索にヒットしない。たとえヒットしても、「あまり力は入っていないなあ」と問い合わせには結びつかなかった可能性が高い。

見込顧客獲得へ専門性を再認識

さきほどのA社事業部に話を戻そう。

富士通総研は2つの方向から戦略構築の具体化を図った。

まず、A社事業部ならびに競争相手の他社が製造する電子部品が、WEB上でどんなキーワードとともに検索されているかを調べた。

ブランド、性能、用途、種類、価格などの分類で洗い出して、「見込顧客」となる人たちがパソコンに打ち込むキーワードを探る作業だ。どういうキーワードを盛り込めば、刺さってくるかを選定するのである。

平行して、A社事業部の関係部署に多角的なインタビューを試みた。この事業部が強みと考え、また戦略的に売り込みたい、伸ばしていきたい製品にうまく合致し、ふさわしい言葉をピックアップするためである。技術開発、生産、企画、営業、顧客管理など幅広くインタビューした。

こうした作業の過程で面白いことがいくつかあった。

競争相手のWEBサイトを調べてみると、バッティングする製品の性能や用途などついての説明が豊富で、質量ともに顧客に強くアピールするような内容だった。検索した人が両社を比べたら、WEBから受ける印象として、どちらがより専門性があって使ってみたくなるかは明快だった。

インタビューも担当した平田由紀子マネジングコンサルタント(以下、平田MC)は「知名度はあると思っていたのに、インターネット上であまりアクセスされていないのは、こうした理由なのか。そういう声があがりましたね。BtoCではキャッチフレーズやイメージの訴求が重要ですが、BtoBでは選定する上で納得のできるより詳細な説明が求められます」と語る。

戦略構築を通じ課題の発見も

そして、ある営業マンはその競争相手について「実はこんなこともやっていて、なかなか知恵を絞っていると日頃から思っていた」と話した。企画担当や事業部の上層部は知らない情報だった。自らの組織内でのコミュニケーションの不足、事業部での情報共有ができていないことにも気づかされたのである。何が自らに欠けているのかを知るきっかけにもなったのだ。

A社事業部はまず自社WEBの再構築を進めているが、新たな課題が見えつつあるという。MAは進化させなくてはいけない。

今後、WEBにアクセスしてきた人にメールを送ったり、営業部門に情報を渡したりするだけでなく、顧客情報や営業の進捗度などを管理し、営業の生産性を高めるセールス・フォース・オートメーション(SFA)は不可欠だ。そして、いったん獲得した顧客を逃さず、さらに深い関係へと発展させるには、カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(CRM)の構築が必要だ。

そうした一連の改革を構想すると、事業部の組織形態はこのままでいいのか、営業業務全般のフローを見直す必要もあるが、現状の部門配置や人員構成でいいのか、部門間を橋渡しする仕組みをどうするかといった問いかけが生まれる。まさに「経営全般の内なる改革を促す」という視点が浮上してきたのである。

取引先の概念や営業手法も変える

平田MCは「取引先という概念にも変化を促すことになるでしょう。企業が見えればよかった時代ではなくなる可能性があります」と言う。これまでは顧客のデータベースは会社単位であり、企業名だったが、担当者個人へのアプローチが取引先企業の新たな対応につながるからだ。担当者にピンポイントで情報が届き、アピールできるかどうかが大きな分かれ目になる。こうした変化を認識したうえで、こちらの態勢や手法も再検討することが求められるだろう。

「BtoB」のデジタルマーケティングはビジネス相手に向けての外向きの戦略ではあるが、組織の意識改革を求められる点で、考えている以上に奥が深く広がりも大きい。

取り組むかどうかの決断は、トップの意識が問われ、高度な経営判断に根ざすべきだろう。これまで掛け声だけで、絵を描いても実行につながらなかった改革を動かす原動力になる可能性もある。様々なデータがデジタル化され、それをつなげていくことが企業活動に新たな価値を生み、経営の重要なツールになるという大きな構想を描いて取り組むべき戦略である。

富士通総研は「考える」だけでなく、「実現する」ことを重視したコンサルティングを目指し、富士通との連携で最適なツールを提供する強みを持っている。

田中SMCは「現場できちんと動く形、回っていく形を描いて様々な提案をしたい。円滑な運用まで含めた改革の定着こそが重要だと考えています」と締めくくった。

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