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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

ネットワーク


雑誌FUJITSU 2018-11

2018-11月号 (Vol.69, No.6)

ICTは,クラウド・AI・IoTを活用したデジタルトランスフォーメーションによって大きな変革を迎える中,次世代ネットワークの基盤として5Gネットワークの期待が高まっています。
本特集では,富士通が考える次世代ネットワークのアーキテクチャーを基にした最新のネットワーク技術やサービスへの取り組みについてご紹介します。

論文

巻頭言

ネットワーク特集に寄せて (541 KB)
執行役員常務 松本 端午, p.1-2

総括

富士通の考える5G/IoT時代の次世代ネットワークビジョン (812 KB)
片倉 純一, 中村 利光, 浦田 悟, 武智 竜一, 松尾 真一郎, p.3-8
ICTの発展に伴い,私たちが住む社会およびビジネスを取り巻く環境は大きく変化している。これらの技術を活用して提供される新たなサービスは,私たちの生活と切り離せないものとなっている。また,ネットワークに関する技術分野では,5G(第5世代移動通信システム)の普及への期待が高まり,多くの企業においてビジネスチャンスが広がっていくと考えられている。このようなビジネス環境の変化を受け,多様化するお客様のニーズを解決するためのネットワークシステムが必要となっている。富士通では,様々な現場のデジタル化に対応するために,お客様の多様な利用形態に合わせて,5G/IoT時代に相応しい柔軟に変化し得るネットワークアーキテクチャーを考えた。このネットワークアーキテクチャーは,デジタルビジネスを担う層,物理ネットワークの層,その中間に位置しそれぞれの価値創造サイクルを連動させる仮想化ネットワーク層の三階層モデルとなっている。
本稿では,富士通が考える5G/IoT時代のネットワークの要件,三階層モデルで表現するネットワークアーキテクチャー,そして次世代ネットワークによる社会的価値の創造について述べる。

新たなサービス創出

業種・業界の枠を越えたデータ流通・利活用サービス (1,014 KB)
江尻 祐介, 池田 栄次, 野村 洋治, 今井 悟史, 伊藤 章, 片桐 徹, p.9-15
近年,IoTやスマートフォンなどの普及によって,ヒトやモノに関連した様々な情報がデータ化・蓄積されている。これらのデータに対してビッグデータ解析やAI(人工知能)技術を活用することで,新たな価値の創出を目指す取り組みが世界的に加速している。その一つとして,業種・業界の枠を越えた様々な企業や組織が保有するデータを提供し合い,相互に利活用するといった取り組みがある。これを実現するためには,データに対するセキュリティ対策やプライバシー保護などの課題を解決し,それらのデータを安心・安全に流通・利活用するプラットフォームが必要となる。そこで富士通は,データの流通・利活用に向けてブロックチェーンを応用したデータ流通ネットワーク技術「富士通VPXテクノロジー」を開発し,この技術を基に「FUJITSU Intelligent Data Service Virtuora DX データ流通・利活用サービス」の提供を開始した。
本稿では,富士通VPXテクノロジーおよびVirtuora DX データ流通・利活用サービスを紹介する。
デジタルビジネスを支援するモバイルサービス (830 KB)
笹川 康徳, 谷口 力昭, 今野 洋平, 石田 道俊, p.16-21
近年,クラウドやIoT,ビッグデータ分析などのデジタル技術を活用した多様なビジネスモデルが創出されている。モバイルネットワークを活用したものとして,スマートフォン向けの低価格通信サービスや,IoT用センサー・ウェアラブルデバイスなどを活用したデータ収集・解析サービスなどが展開されている。このようなサービスは,通信関連事業者に限らず,大手流通事業者やコンテンツプロバイダーなど,異業種の事業者も提供し始めており,ビジネスの広がりを見せている。富士通は,こうしたモバイルネットワークを活用した新たなデジタルサービスを検討している事業者に対して,導入から運用までを支える「デジタルビジネス支援モバイルサービス」を提供している。本サービスは,ユーザー情報登録やSIM(Subscriber Identification Module)管理,オンラインチャージなどの一連のモバイルサービス業務をサポートする機能を取り揃えている。更に,SIMのキッティング,配送,本人確認などのサービスもワンストップで提供する。
本稿では,デジタルビジネス支援モバイルサービスの概要と技術要素について説明する。
スマートファクトリーの実現を支える無線ネットワーク (1.03 MB )
蛭田 盛夫, 松岡 誠司, 齋藤 美寿, 西川 卓朗, p.22-29
昨今,スマートファクトリーをキーワードとして,生産現場におけるIoT技術の活用の高まりとともに,あらゆるものを接続するためのネットワーク環境の重要性が増している。つながる対象は,生産設備や各種センサー,カメラ,生産現場で働く人など多岐にわたり,それらの配置は必ずしも固定されてはいない。これらを効率的にネットワークに接続するために,無線ネットワークの利用が増大している。しかし,生産現場では製造する製品に応じてレイアウト変更が発生するため,電波環境が安定せず,都度ネットワーク環境の再設計が必要となる。また,接続対象となるセンサーや生産設備ごとに利用される無線技術も,Wi-FiやBluetooth,BLE(Bluetooth Low Energy)など様々であり,電波干渉も発生しやすい。富士通では,これらの問題を解決する技術により,お客様の工場ネットワークの無線化を支えている。
本稿では,そのための富士通のアプローチを紹介する。まず,複雑な生産現場においても安定した無線通信を実現する高信頼無線ソリューションについて述べる。更に,その設置や運用保守の核となる電波環境の可視化技術と,最適な無線機器配置を決定する無線設計技術について述べる。
自由視点映像生成技術による5Gネットワーク映像ソリューション (967 KB)
鶴田 徹, 山田 亜紀子, 都市 雅彦, 椎崎 耕太郎, p.30-36
ネットワークを利用したサービスやアプリケーションが当たり前に使われるようになり,実世界をデジタルの世界でエンパワーメントするCyber-Physical Systemの実現に向けた取り組みが進んでいる。5G(第5世代移動通信システム)が普及する時代の到来により,この動きがますます加速することが予想される。実世界の状況を瞬時にデジタル化して処理・分析し,結果をタイムリーにフィードバックし,今までにないリッチな情報を瞬時にかつ多数の人・サービスの間でやり取りすることで,新たな体験が人々にもたらされるであろう。
本稿では,まず5Gネットワークの概要や関連する取り組みについて概観する。次に,新しいスポーツ観戦スタイルを提供するために,高い臨場感のある映像を作り出す富士通研究所の自由視点映像生成技術における5Gネットワーク活用への期待を述べる。

安心・安全なネットワークテクノロジー

5Gネットワークの容量増大技術 (1,003 KB)
瀬山 崇志, 尾崎 一幸, 伊達木 隆, 関 宏之, 箕輪 守彦, p.37-43
2020年以降の実用化が期待されている5G(第5世代移動通信システム)は,飛躍的な性能向上による通信の大容量化に加え,低遅延・高信頼・超多数デバイス接続といったネットワークの進化をもたらす。5Gの活用例として,監視カメラ映像の伝送,スタジアムにおける多視点ビデオ映像のリアルタイム視聴,工場におけるロボットの制御などが挙げられる。これらのサービスを収容するための容量増大技術として,小セル化やビーム多重技術が検討されているが,セル間干渉やビーム間干渉が通信品質を低下させてしまうという問題を解決する必要がある。これに対して富士通は,集中ベースバンド処理装置(C-BBU:Centralized Base Band Unit)によって,セル間の干渉を低減させるダイナミック仮想セル制御技術と,アンテナ構成およびサブアレイ間符号化によりビーム間干渉を低減させるサブアレイ間符号化インターリーブビームフォーミング技術を開発した。
本稿では,これらの技術の特長と適用シナリオ,シミュレーションおよび実験による評価結果について述べる。
5G時代の多様なデジタルサービスを実現する富士通マルチアクセスエッジクラウド (907 KB)
安藤 嘉浩, 小川 淳, 上野 仁, 高橋 信宏, p.44-51
5G(第5世代移動通信システム)時代の到来が間近に迫っている。5Gでは,超高速大容量通信,超低遅延・高信頼,多数同時接続といった通信環境が提供され,これらの特長を活かした高度なデジタルサービスが創出されると考えられる。こうしたサービスは,一人ひとりの環境や状況に応じて柔軟に提供されることが重要になる。このような,5G時代のサービス提供に向けた革新的なプラットフォームを実現するのが富士通マルチアクセスエッジクラウドである。これは,ネットワーク全体にコンピューティングリソースを配置して効率的に利用することで,多様なデジタルサービスを容易に提供できるようにするための分散システムを実現するものである。2017年度に商用ネットワークを使った実証実験を行った結果,富士通マルチアクセスエッジクラウドを用いることで,エッジ(サービス要求に応えられる適切な場所)でサービスを容易に提供できることを確認した。
本稿では,5G時代の多種多様なサービスに対応する富士通マルチアクセスエッジクラウドを構成する機能と,それを実現する主な技術について述べる。
5G時代のサービスに向けた端末開発技術 (1.09 MB )
井上 栄, p.52-59
5G(第5世代移動通信システム)時代に向けてインフラの構築が進む中,高速・大容量,低遅延,多数接続といった5G無線の特長を活かしたサービスの開発も併せて進んでいる。各種サービスのインターフェースとなるスマートフォンやタブレットなどの端末は,今まで以上にネットワーク機能とコンピューティング機能が高度に融合した形となる。しかし,サービス実現のため5G対応端末は,無線性能の継続的確保,端末での処理が増加することによる消費電流の増加,熱の発生といった問題が今以上に顕著になる。富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社(FCNT)は,それらの問題を解決するために「端末無線技術」「ネットワークインフラ技術」「サービス基盤技術」の三つの領域に落とし込んで端末に実装する技術を開発している。これにより,ユーザーは手のひらに載る端末で高性能なインターネットサービスなどをかつてない信頼性で利用できる。
本稿では,各領域における技術の特長について述べる。
5Gサービスを支える光ネットワーク技術 (1.03 MB )
小田 祥一朗, 斉藤 卓, 西村 和人, 早川 明憲, p.60-67
5G(第5世代移動通信システム)が,2020年頃の実用化に向けて開発が進められている。5G時代では,高精細動画の配信,低遅延性が必須である自動運転,IoTによって多種多様な機器をつないだデータの利用など,新技術を活用したサービス(5Gサービス)が展開される。5Gサービスを支える社会基盤となる光ネットワーク(5G光ネットワーク)においても,様々な技術を用いる必要がある。そこで,富士通は大容量データを効率良く低遅延に伝送する技術や,複雑なネットワーク運用を自動化する技術などを開発している。
本稿では,5G光ネットワークの課題を述べ,課題の解決に向けて富士通が開発した技術を紹介する。

サービス実現のための構築・運用

クラウド時代のネットワーク構築・運用自動化技術 (950 KB)
藤井 和浩, 田崎 幸司, 小峰 浩昭, 宗宮 利夫, 奥田 將人, p.68-76
スマートフォンやクラウドサービスの普及に伴って大規模化するクラウドシステムは,ソフトウェア技術を駆使した運用自動化が進展している一方で,ネットワークの構築や運用管理の自動化は進んでいない。例えば,SDN(Software-Defined Networking)はソフトウェア定義によるネットワーク運用自動化を実現する技術として期待されたが,クラウド内ネットワークの部分的な利用にとどまっている。一方,エンタープライズネットワークなどの既存ネットワークに関しては,依然として人手による構築と熟練者による運用管理に頼っている。富士通はネットワーク運用自動化を推進するために,企業や通信事業者へのSDN制御システムの導入や,オープンソースソフトウェアコミュニティへの参画など,SDNへの取り組みを積極的に進めてきた。
本稿では,ネットワーク運用自動化に向けて開発したEnd-to-Endのネットワーク設計・構築技術について述べる。また,データをAIで分析してネットワーク異常を自動検出するトラフィック検知技術について述べる。更に,それらの技術を用いてネットワーク運用自動化を実現する富士通ネットワーク運用管理製品FUJITSU Network Virtuoraシリーズについて紹介する。
ネットワークの自律的な運用保全を行うコンシャスネットワーク (1.05 MB )
新田 拓哉, 青木 泰彦, 大矢 恭子, 飯塚 史之, 本多 俊樹, p.77-83
コンピューティングリソース,フロントデバイス,およびアプリケーションがオンプレミスやクラウドなどの様々な場所に配置され,それら全てがネットワークでつながり,人々や社会に多様なサービスをもたらす時代になってきた。一方で,ネットワークに障害が生じると,それらに多大な影響を及ぼしてしまう。これを防ぐためには,ネットワーク上で生じるわずかな変化を予兆として捉えて障害を未然に防止したり,あるいはエンドシステムには手を加えず,ユーザーにも気付かせることなくサービスを継続して利用可能にしたりする,自律的な運用保全を行うコンシャスネットワークが必要になると考えられる。そこで,富士通はネットワークの統合的な監視に必要となる,IP(Internet Protocol)パケットの挙動分析や光伝送装置の信号品質モニタ分析による予兆検知技術,IPネットワークの自動診断技術,および光波長再配置技術の開発に取り組んできた。
本稿では,コンシャスネットワークを実現するために必要となる,これらの技術について述べる。
エリア品質情報を活用した通信品質改善の自動化 (768 KB)
井沢 泰成, 品田 優貴, 浜田 裕, p.84-90
移動体通信事業者が顧客満足度を向上させるためには,通話時の音声品質やデータ通信時のスループットなどの通信品質の改善が重要である。通信品質をより高めるために,移動体通信事業者はエリアの電波強度や雑音量,時間帯ごとの混雑状況などのデータを収集・分析して,既存基地局のチューニングや,新しい基地局の設置などによるネットワークの改善を図っている。データの収集・分析と通信品質の改善策立案は,人の労力や経験,知識に頼っており,これが効率的で迅速な通信品質の改善を阻んでいる。富士通は,エリア品質収集分析システムの開発によって,一連の作業を遠隔操作で自動化し,これまで人の労力に頼っていた作業の効率化に取り組んできた。更に,人の経験や知識が不可欠である分析・改善策の立案作業を自動化するためには,機械学習技術の適用が有効であると考えた。これに対して,機械学習技術の手法の一つである決定木アルゴリズムを用いて,人の経験や知識から導かれていた通信品質劣化の要因を抽出できることを確認した。
本稿では,通信品質改善の自動化に関する富士通の取り組みについて述べる。
マルチクラウド時代の次世代ハイブリッド型ネットワークの実現 (949 KB)
高村 智幸, 櫻井 秀志, 山本 大, 村上 雅彦, 山崎 浩一, 海野 由紀, p.91-98
企業ではクラウドの利活用が活発になり,企業内ネットワークの形態は大きな転換期を迎えている。従来型のセンター集中型閉域ネットワークではなく,拠点から直接インターネット上のSaaS(Software as a Service)を活用できるハイブリッド型ネットワークへの移行を考えている企業もある。しかし,それを実現するためには,複雑化する多拠点のネットワーク運用や拠点内のセキュリティ対策の課題を解決しなければならない。富士通と富士通研究所は,SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)の考え方と,合理的なマルウェア対策の考え方を基にそれらの課題を解決するとともに,更に利便性と安全性を両立させたセキュリティ技術の研究開発を行っている。
本稿では,マルチクラウド環境に最適化されたハイブリッド型ネットワークを実現するための富士通の取り組みについて述べる。
様々なモノを簡単・安定・安全にデジタル世界につなげるフィールドエリア管理基盤 (858 KB)
角田 潤, 小林 祐介, p.99-106
企業の業務革新や安心・安全な社会の実現に寄与する技術として,IoTへの期待が高まっている。ところが,現場(フィールドエリア)に設置されるセンサーなどのデバイスは,パソコンなどに比べて機能が限定的で信頼性が低く,デバイスが利用する無線ネットワークも不安定であるという問題を抱えている。富士通研究所では,こうしたデバイスを活用する本格的なIoT時代を迎えるに当たって,フィールドエリアに設置された各種デバイスの運用管理が重要になると考えている。そこで,簡単・安定・安全にデバイスを接続するためのデバイス仮想化技術,障害管理技術,およびセキュア運用技術の研究開発を推進している。
本稿では,これら三つの技術の概要とこれらの技術を利用したフィールドエリア管理基盤,およびその適用例について述べる。