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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

ヒューマンセントリックIoT


雑誌FUJITSU 2016-3

2016-3月号 (Vol.67, No.2)

富士通は2014年をIoT(Internet of Things)元年と捉えて「ヒューマンセントリックIoT」を発表し,2015年にIoTプラットフォームサービスの提供を開始しました。本特集号では,IoT社会の実現を支えるソリューション,最先端のテクノロジー,および社内外でのIoTの実践事例をご紹介いたします。



巻頭言

ヒューマンセントリックIoT特集に寄せて (510 KB)
執行役員常務 香川 進吾, p.1

特別寄稿

日本の強みを活かすIoTイノベーションの展望 (866 KB)
佐々木 宏, p.2-6

総括

富士通のIoTビジネスへの取組みと最新技術 (844 KB)
須賀 高明, 奥山 敏, p.7-15
今,IoT(Internet of Things)が脚光を浴びている。メディアで取り上げられない日はないと言っても過言ではない。IoT関連のプロジェクトを分析すると,従来のような投資対効果だけではなく,これまでになかった新たな予測や気づきを人に与えることで,新たな価値の創造を目指すといった傾向も見えてきた。富士通では「ヒューマンセントリックIoT」というコンセプトを打ち出し,人を中心としたIoTの世界を実現するために,様々な取組みを進めている。例えば,IoT関連商品を組み合わせることで実現できる価値を明確にしたIoT実装モデルを整備し,そのモデルをベースとしたお客様とのビジネス共創,ビジネスパートナーとのエコシステム形成の実現を目指している。このIoTの世界を実現するために,システムがカバーすべき技術の範囲は非常に広い。また,従来のICTシステムとは異なるIoTに特有な要件も存在する。このため,富士通は要件がダイナミックに変化するIoTの特徴に着目した新たな研究開発を推進している。
本稿では,IoTビジネスの現状や傾向,および最新技術の動向も踏まえながら,富士通の取組みを説明する。

IoT社会の実現を支えるソリューション

データ利活用を促進するIoT Platform (732 KB)
寺崎 泰範, p.16-22
富士通は,ヒューマンセントリックIoT(Internet of Things)の実現に向けて,IoTプラットフォームFUJITSU Cloud Service IoT Platform(以下,IoT Platform)を提供している。これは,富士通のデジタルビジネス・プラットフォームFUJITSU Digital Business Platform MetaArcにおいて,IoT専用PaaS(Platform as a Service)として位置付けられるクラウドサービスである。IoT Platformは,お客様の現場に設置されるセンサーやデバイス群からのデータ収集,およびそれらに対する指示データの配信機能を提供する。また,収集配信するデータの管理機能やそのデータを様々なアプリケーションから利活用するためのAPI(Application Programming Interface)と,アクセスコントロール機能も提供している。IoT Platformを導入することで,お客様が様々な方々と安心して共創しながら新たなイノベーションの継続的な創出が可能となる。
本稿では,ヒューマンセントリックIoTを実現するためにIoT Platformに求められる要件とそれを具現化する製品の機能概要,およびエンハンス計画について述べる。
システムの異常予兆を検知するリアルタイム監視ソリューション (794 KB)
花森 利弥, 西村 利浩, p.23-28
従来,システムの異常検知は,しきい値やルール設定により行われてきた。しかし,システムが多様化し解析対象が膨大かつ複雑化した現在においては,監視するパラメーターが多過ぎ,人間がそれらの関係性を把握することは不可能になってきている。また,そうした関係性をデータ分析によって把握するためには,高度な専門知識が必要となり,それがデータ活用が進まない一因となっている。この問題を解決するために富士通が開発した予兆監視ソリューションは,正常時の稼働データを機械学習し,「いつもと違う状態」を自動的に検知する異常予兆検知モデルを,対象データの絞込みから異常原因の特定に至るまでのプロセスと一体で提供する。これにより,高度な分析ノウハウを必要とすることなく,現場レベルでシステムの異常予兆を高精度かつリアルタイムに捉えられるようになる。
本稿では,ICTシステムのダウンや製造業における製造設備の故障による製造ラインの停止など,システムの異常予兆をリアルタイムに監視可能とするソリューションを紹介する。
独自アルゴリズムで価値を生む富士通のユビキタスウェア (1.08 MB )
藤野 克尚, 相原 蔵人, 木場 隆弘, 北村 卓也, 椎谷 秀一, p.29-34
IoT(Internet of Things)は,業務ソリューションやサービスに対し新たな差異化を生み出すキーアイテムとして幅広い分野への活用が期待されており,大きなポテンシャルを秘めている。その一方で,業務やサービス一つひとつにマッチングしたデバイスや,そのデバイスを活用するアプリケーションを個別に開発するためには非常に大きな工数を要する。富士通のIoTパッケージであるFUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(以下,ユビキタスウェア)は,多種多様に可能性の枝葉を伸ばすIoTを,どうすれば効果的かつ効率的に活用できるかをテーマとして開発に取り組んだ。ユビキタスウェアは,システムへ簡単に組込み可能な「コアモジュール」と,業務アプリケーションへの活用を容易にする「センサーアルゴリズム(サーバソフトウェア)」を組み合わせて提供する。
本稿では,このユビキタスウェアの特長と,その礎となっている富士通の独自技術であるヒューマンセントリックエンジンのアルゴリズムについて説明する。
製造現場におけるIoTを活用した作業支援ソリューション (985 KB)
閑林 卓, 百木 なおみ, 尾上 隆, p.35-41
製造現場におけるIoTの活用として,富士通が提案するソリューションを紹介する。本ソリューションは,企業向けノートPCを小ロットで受注生産している島根富士通において実践しているものである。本工場では,カスタムメイド製品を製造しており,仕様が3000種,機種ごとの部品点数が100~250に及ぶ。これらを定められた納期順に従い,部品を正確に,かつ定められた時間に供給することが必須となる。こうした状況の中,ピッキング作業を正確に,かつ効率的に行うためにIoT支援ツール(ストアピッキングカート)を開発した。開発に当たり,人手を介さずレイアウトを固定しない(電源,LAN配線など)支援ツールを低コストで実現することを重視し,継続的な現場改善を目指した。このツールで取得する実績データと,従来から提供している仮想検証ツールとを連携させることで相互検証が可能になる。富士通は,これをより効率的な製造を実現するソリューションとして提供している。
本稿では,富士通が実践するこうしたIoT活用に基づくものづくりソリューションを中心に紹介し,併せて今後の拡張,および次世代ものづくりへの取組みについて述べる。

IoT最先端テクノロジー

IoTデータの処理・利活用を促進するダイナミックリソースコントローラー技術 (1.10 MB )
久保田 真, 福田 茂紀, 野村 佳秀, 阿比留 健一, p.42-51
近年,IoT(Internet of Things)のビジネス活用の本格化に向けて,エッジコンピューティングと呼ばれる考え方が注目されており,各社で取組みが始まっている。これは,全てのデータ処理をクラウド上で行うのではなく,現場近くのノードに分散させることでIoTによる通信トラフィックの爆発的な増加を抑制し,ネットワークのレスポンス向上を図るものである。富士通研究所ではこの概念を拡張し,現場の端末近くに設置したコンピュータ(エッジノード)をクラウドに融合させ,現場の状況変化に応じてデータ処理や蓄積の場所をエッジノードとクラウドの間でダイナミックに最適化するダイナミックリソースコントローラー(DRC)技術を開発した。これにより,既存のエッジコンピューティングと異なり,ネットワークリソースの使用量が削減できる。またそれだけでなく,余剰のネットワーク帯域があれば積極的にネットワークリソースの使用量を増やして新たな発見につながる未加工の生データをクラウドに集めたり,デバイス増加やエッジノード負荷変動の際に,一部処理の実行場所をリソースに余裕のあるエッジノードに変えたりすることで,システムの安定性維持が可能になる。
本稿では,デバイス増加やエッジノード負荷の変化時に適切な処理実行場所を高速に決定するDRC技術の仕組みと,その評価結果を紹介する。
ビッグデータ利活用に向けたIoTセキュリティ ~相互認証と位置データ匿名化技術~ (884 KB)
新崎 卓, 森川 郁也, 山岡 裕司, 酒見 由美, p.52-59
モノ(機器)のインターネットと呼ばれるIoT(Internet of Things)の普及が進むとともに,IoTによって収集されたビッグデータを解析して利活用することやアプリケーションへの活用が進んでいる。対象となるIoT機器は,センサー,自動車,家電,ウェアラブル端末など多種に及び,やり取りされるデータの種類を考慮しながら機器や使い方に応じたセキュリティ技術を適用していく必要がある。
本稿では,IoTセキュリティに求められる要件を示すとともに,富士通研究所の具体的な取組みとして,IDベース鍵共有方式をTLS(Transport Layer Security)に拡張適用して相互認証と暗号通信を同時に実現した技術を紹介する。また,位置データ利活用のための匿名化技術として,地図上の固定メッシュを多層的に使用することで,小さい領域のデータを安全により多く開示できる技術を紹介する。
ヒューマンセントリックIoTに向けたフロントデバイス技術 (1.12 MB )
沢崎 直之, 石原 輝雄, 毛利 真寿, 村瀬 有一, 桝井 昇一, 中本 裕之, p.60-66
あらゆるヒト・モノ・環境の情報がデジタル化され,ネットワークにつながるIoT(Internet of Things)の時代を迎えている。IoTにおけるフロントデバイスは人の活動する場に配置され,実世界の様々なモノからリアルタイムにデータを取得し,タイムリーに必要なサービスをユーザーに提供する役割を担う。フロントデバイスの動向として,携行するデバイスでは個人の健康や行動情報を連続的に取得したり,パーソナライズサービスに有用なデータを効率的に取得したりする場合に利用され始めている。環境側に配置されるデバイスでは,人がいない場所や時間帯の環境情報を継続的に取得することや,人の行動を観察する場合に利用され始めている。筆者らはこの動向に対し,ウェアラブルスタイルでICTを利用するユーザーインターフェース技術や,メンテナンスフリーでデバイスを制御する技術を開発している。
本稿では,人の活動の場を常時ICTで支えることを目指して開発したグローブ型入力デバイス,指輪型入力デバイス,メンテナンスフリービーコンなどの開発事例や,エナジーハーベスト向け昇圧コンバーターなどの将来技術の取組みを述べる。
IoT時代を支える無線ネットワーク技術 (981 KB)
藤野 尚司, 小川 浩二, 箕輪 守彦, p.67-76
センサーの小型・省電力化,ネットワークの多様化,クラウドの普及といったICTの進化により,インターネットにつながるモノは2013年の100億個から2020年には500億個にも増加すると言われている。モノのインターネットとも呼ばれるIoT(Internet of Things)は,ビッグデータ解析技術を組み合わせることによって新たな価値を創造し,人々の生活や経済に非常に大きな良い影響を与えることが期待されている。このためには,入出力端末やクラウドコンピューティングなどの進化とともに,有線・無線を含めたネットワーク技術の継続的な進化と変革が不可欠である。特に無線に関しては,携帯電話の出現以降,10年に一度の技術革新により我々のライフスタイルやビジネススタイル変革の原動力となってきている。
本稿では,まず移動通信ネットワークの次世代技術である第5世代移動通信システム(5G)のビジョンと標準化動向を中心とした技術の検討状況,および富士通の取組みを紹介する。また,富士通が提唱するICTの仮想化やソフト化に向けたFINCA(FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architecture)コンセプトの有用性と,5G向け無線アクセス技術の収容に向けた今後のネットワークの検討課題について考察する。

IoT実践事例

IoT活用による工場の生産活動最適化 (1.03 MB )
地主 岳史, 知崎 一紘, 川上 裕介, p.77-83
富士通グループの各工場は,これまで数々の改善活動を実施し,製品の品質および業務の効率の向上に取り組んできた。しかし,それらの改善活動では人手による定量測定が必要であり,その自動化が課題であった。今回,IoT(Internet of Things)を活用して,製造ライン・モノ・環境に関するデータをタイムリーに収集・集約・可視化し,経営判断や現場対応に役立てるとともに,工場内の測定業務から解放し生産性の効率化につなげる仕組みを構築した。
本稿では,IoTを活用した富士通グループ会社の社内事例として,山梨・会津若松・島根の各工場における業務の見える化への取組みについて述べる。
豊田市実証プロジェクトにおけるCEMS開発・実証 (734 KB)
神谷 匡洋, 尾崎 純子, p.84-91
愛知県豊田市における「家庭・コミュニティ型」低炭素都市構築実証プロジェクトは,2010年から2014年の5か年計画で実施された大規模な社会システム実証事業である。このプロジェクトでは,クラウドコンピューティング,スマートフォン・タブレット,ビッグデータ,M2M(Machine to Machine),IoT(Internet of Things)など,現在のトレンドとなっているテクノロジーが取り入れられている。電力や機器の運転モードなどを1分ごとにセンサーで収集し,デジタルデータとして蓄積する。こうして蓄積されたビッグデータを解析することで生成された情報は,インターネットを介して価値ある情報として現実社会へフィードバックされる。具体的には,生活者に行動支援情報を提供したり,機器運転を制御したりすることで変化をもたらし,低炭素社会の促進に貢献する。
本稿では,社会的な課題である持続可能な低炭素社会の実現に向けて,富士通がこのプロジェクトにおいて行った,IoTを活用したコミュニティ全体のエネルギーバランスの最適化を支援するCEMS(Community Energy Management System)の開発と実証について述べる。
安全運転支援と輸送品質向上を実現するSaaS型新運行管理システム:Logifit TM-NexTR (823 KB)
城戸 俊博, 中村 充宏, p.92-97
SaaS(Software as a Service)型新運行管理システムLogifit TM-NexTR(ロジフィット ティーエム ネクストラ)は,富士通のロジスティクスソリューション「Logifit」シリーズの運行管理業務を担う製品である。これは,デジタルタコグラフを用いた運行支援システムとして実績のあるTRIASシリーズのノウハウをベースとして開発した次世代型システムである。Logifit TM-NexTRでは,従来の運行管理や動態管理に加え,荷主や納品先といった顧客視点の到着管理にも対応している。Logifit TM-NexTR導入により,富士通のIoT(Internet of Things)技術を通じて各種センサーデバイスとの連携が可能となり,従来のデジタルタコグラフより低コストで簡単に安全運転支援と輸送品質向上を実現できる。
本稿では,Logifit TM-NexTRの開発に至った経緯と,IoTの活用事例について述べる。