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雑誌FUJITSU

2015-7月号 (Vol.66, No.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


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雑誌FUJITSU 2015-7

特集:「イノベーションを実現するビッグデータ活用」

本特集では,ビッグデータ活用を支える富士通の最先端テクノロジーとICT基盤の開発の取組み,およびビッグデータと富士通のサービス・ソリューションを組み合わせた活用事例を紹介します。


執行役員
今田 和雄
執行役員 今田 和雄 写真

イノベーションを実現するビッグデータ活用特集に寄せて(PDF)

ビッグデータの活用領域は,企業活動の革新(ビジネスイノベーション)から,農業・交通・医療・環境保全などの社会インフラや生活に関わる革新(ソーシャルイノベーション)へと拡大しています。富士通は,ビッグデータ活用による共創を通じてお客様の新たなイノベーションを生み出し,企業と生活者をつなぐ豊かな社会を目指していきます。

特集:イノベーションを実現するビッグデータ活用 目次〕

総括

  • ビッグデータのトレンドと富士通の取組み

ビッグデータ活用を支える最先端テクノロジー

  • オープンデータの高度利用を支えるLinked Open Dataとその応用
  • 数式処理による入試問題への挑戦~ロボットは東大に入れるか~
  • 外れ構造抽出技術を用いた大規模セキュリティログ分析
  • ビッグデータ利活用を支える並列分散処理と類似検索の高速化技術

ビッグデータ活用を支える最先端のICT基盤

  • IoT時代における垂直統合型データウェアハウス基盤
  • コールドストレージを適用したビッグデータ解析基盤
  • 新しいビッグデータ活用を支えるIoTプラットフォーム

新たなビジネスを拓くビッグデータ活用シーン

  • ビッグデータを活用したものづくり現場のイノベーションを支援する「最強工場」
  • データ活用による価値創造を導くワークショップメソッド
  • 大量データから業務革新や新規ビジネスを創造するデータキュレーションサービス
  • 社内実践による「スマートなものづくり」実現への取組み
  • 消費行動の現場を捉えるマーケティング~食品業のイノベーション事例~
  • 飼主とペットの生活を豊かにするビッグデータ活用:どうぶつクラウド

特集:イノベーションを実現するビッグデータ活用


総括

ビッグデータという言葉が広く使われるようになってから数年が経ち,本格的な普及期を迎えている。次のICTメガトレンドとして注目されているIoT(Internet of Things)によって,日々生成されるデータが今後ますます増え続けていくことが予測されており,ビッグデータを高速かつ低コストで処理するためのソフトウェア/ハードウェア技術の開発が進んでいる。また,機械学習や人工知能といった技術により,ビッグデータを経営や業務の意思決定に活用するためのアナリティクスも高度化してきており,ビッグデータの応用領域は,ビジネスイノベーションからソーシャルイノベーションへと拡大を始めている。
本稿では,イノベーションを実現するビッグデータ活用特集号の総括として,ビッグデータのトレンドと技術に関して「データ」「アナリティクス」「アプリケーション」の三つの観点から整理し,その中に本特集における各論文を位置付けることによって,富士通のビッグデータにおける最新の取組みについて説明する。

渡部 勇

ビッグデータ活用を支える最先端テクノロジー

「世界最先端IT国家創造宣言(2013年6月閣議決定)」では,公共データの民間開放(オープンデータ)を推進するため,2014年度および2015年度の2年間を集中取組み期間と位置づけており,官公庁・自治体を含めたオープンデータ活動が広がっている。こうした中,富士通研究所では,オープンデータの利用価値を高める技術として,オープンデータの五つ星と言われるLinked Open Data(LOD)に関する技術開発を早くから開始し,研究成果の一部を一般公開している。
本稿では,Web上のLODを検索するサービス(LOD4ALL)や地域の特性を見える化するWebツール(EvaCva)を中心に,オープンデータのエコシステム創出に向けた富士通研究所の取組みを紹介する。

井形 伸之, 粂 照宣, 中澤 克仁, 塩田 哲義

今日,ビッグデータが注目される背景には,いかにうまくデータを解析し,新たな価値を創出できるかという大きな期待がある。データを効率的に解析し,新たな知見を抽出し価値創造するために,自然言語処理,画像認識,音声認識,機械学習などの人工知能の要素技術への関心が再度高まっている。人工知能の発展に期待する知的タスクは増大する一方で,全てのタスクにおいて必要十分なビッグデータが手に入るわけではなく,スモールデータしか存在しない場合でもうまく処理するために,既存の人工知能の技術に新たなロジックを融合することが必要となる。そのような試みとして,自然言語で与えられた入試問題に対して自動解答する人工知能を開発し,東京大学の入試を突破することを目標に掲げた人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を紹介する。富士通研究所は,数学入試問題解法に対する強力なツールである数式処理,および限量記号消去法を長年研究しており,数学チームへ参画している。
本稿では,数学入試問題自動解法の概要を示した後,その技術課題について述べる。また,実際の入試問題や入試模試を用いた現状の解答システムの評価についても紹介する。

岩根 秀直, 穴井 宏和

昨今,サイバー攻撃が激化・巧妙化する中,未知の攻撃やその意図を早期に発見・分析することは喫緊の課題である。しかし,従来のルールベースでの分析やデータ単体の外れ値検知では,大量のネットワーク監視ログに紛れた巧妙な未知攻撃の抽出・発見は困難である。そこで富士通研究所は,この課題解決のために,ビッグデータ分析技術を適用し,セキュリティログのような大規模離散値データから,外れ構造(まれな特徴を有するデータ群)を抽出する「外れ構造抽出技術」を開発した。この外れ構造抽出技術をネットワーク監視ログに適用することで,大量のログすなわちビッグデータに紛れた巧妙な攻撃を抽出できる。実際にサービスを運用している多数のサーバから得られた,IDS(Intrusion Detection System:侵入検知装置)ログに外れ構造抽出技術を適用しセキュリティの観点からその抽出結果を詳細に分析することで,従来知られていなかった巧妙かつ高度な戦略を持つ攻撃を検出することに成功した。
本稿では,実際のIDSログに対して,この外れ構造抽出技術を活用した取組みと事例を紹介する。

本多 聡美, 丸橋 弘治, 鳥居 悟, 武仲 正彦

ビッグデータという言葉が広まり始めて数年が経った。ビッグデータの利活用は,はじめは消費者系サービスで使われたが,近年は企業にも導入されてきている。従来のICTシステムでは扱えなかったデータを処理することで,ヒット商品を開発したり,事故や危険の防止に利活用したりする事例が増えてきている。企業におけるビッグデータの利活用では,消費者系サービスとは異なり,業務データを中心とし,センサーや画像など現場で新しく得られるようになった現場データ,あるいはソーシャルネットワークサービスや自治体のオープンデータなどの外部データと組み合わせて新しい知見を得ることが必要となる。その際,まず基本として必要となるのは,複数のデータ系列の結合を高速に処理することや,センサーや画像から必要な情報を検索することである。
本稿では,企業内にある大量の業務データのバッチ処理を分散して処理することで高速化するHadoop業務データ活用技術と,センサーや画像などの類似性検索を従来よりも大幅に高速化する高速近似類似検索技術を紹介する。

土屋 哲, 上田 晴康, 此島 真喜子

ビッグデータ活用を支える最先端のICT基盤

センサーやモバイル機器の進化により,膨大なデータがリアルタイムに取得できるようになってきた。これに伴い,分析の対象データが,過去の蓄積データからリアルタイムなデータへと変化している。リアルタイムなデータ活用では,分析とアクションのスピードが重要になる。このため,膨大なデータを地図や図面などの人が理解しやすい構造に結び付けることが求められる。この分析の変化は,分析アルゴリズムの多様化,直感的に操作できるデータビジュアライゼーションツールの増加,Deep Learningをはじめとする最新の画像認識技術など,活用・検索・情報の三つの技術革新をもたらしている。このような中,情報分析を支えるデータベースには,多種多様で膨大なデータをコンパクトに蓄積し,様々な新しい技術と連携しながら,データを高速に抽出・解析できることが求められる。これを満たすのが,垂直統合型データウェアハウス基盤 FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for Analyticsである。
本稿では,大量データの高速抽出・解析,センサーデータの高速マッピング,および非構造データからの新たな情報生成の技術とそれを実現するFUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for Analyticsについて紹介する。

安永 尚稔, 中村 文昭, 山岸 祥子

ビッグデータ解析は,大量のデータ処理を行うために大容量のストレージが必要となる。従来型のストレージでは容量・コストともに対応が難しくなってきておりビッグデータの最終アーカイブ先としてコールドストレージという低コスト大容量ストレージが注目されつつある。これにより,今までは廃棄せざるを得なかった大量の過去データを長期保管することが可能となり,過去データも含めた再解析や解析ルールの再定義が可能になる。富士通では,ビッグデータ解析基盤にコールドストレージを組み込む過去データ検索エンジンの開発に取り組んでいる。
本稿では,コールドストレージの例として業務用光ディスクライブラリを紹介するとともに,それをビッグデータ解析基盤に活用した例について述べる。

藤巻 秀明, 久留米 修, 入江 将勝

IoT(Internet of Things)は,全てのモノ,ヒト,コトがつながる環境が整備され,集められたデータが価値ある情報としてヒトに様々な体験を与えたり,判断の支援や新しい発見をもたらしたりする。従来のソーシャルビッグデータに加えて,IoTによる新しいビッグデータの活用が形成されようとしている。IoTによる新しいビッグデータを活用するには,大量の機器やセンサーから発生する大量なデータの中から有効なデータを探し出し,収集したデータの分析をリアルタイムに,かつ高度なセキュリティ処理をするといった要件が挙げられる。更にそのような要件が時間や期間,イベントなどの外部環境に応じて変化することが考えられる。これらの要件を1か所で対応するのではなく,エンドポイント,ゲートウェイ,クラウドなど様々な場所に処理を分散させることや,どこでどのような処理をすれば効率的かなど,要件や環境によって動的に変更できる機能が重要になる。その際,各コンポーネントをつなぐネットワークによる分散システムが重要な役割を果たすことになる。

須賀 高明

新たなビジネスを拓くビッグデータ活用シーン

国内製造業は加速する生産拠点の高年齢化や熟練ノウハウの継承問題,更には少量多品種生産などへの環境変化により,仕掛品の過剰生産,製品品質の低下,設備トラブルの多発など,様々な課題を抱えている。そこで筆者は,これまでの製造業のお客様支援を通じて得た知見を整理し,ビッグデータを活用したものづくりのあるべき姿として,ビッグデータ解析技術による「最強工場」をイメージ化した。これにより,上述の問題を解決するとともに製造業の積極的な投資を促進していく。
本稿では,まず製造業のお客様課題と「最強工場」の誕生に至った背景を述べる。そして,「最強工場」を構成する個別機能と今後の課題について述べる。

安部 純一

eコマースやオムニチャネル化,IoT(Internet of Things)など,ICTの活用により企業活動そのものがデータ化され,かつオープンガバメントの推進などによって外部データを活用する環境も整いつつある。このような中,大規模データハンドリング技術を活用したビッグデータ分析や高度統計手法を使った新たな価値創造に対する期待が高まっている。しかし,実際には簡単にデータ分析から新たな価値が発見され,ビジネス活用できるわけではない。データ活用と価値創造を結びつけるためには,目的に合ったデータ活用のアプローチ方法を理解した上で,ワークショップでの検討へと進めることが重要である。
本稿では,まず価値創造に資するデータ活用アプローチの類型を整理し,データを活用したワークショップの成功ポイントを示す。次に,富士通が提唱する「データ活用型価値創造ワークショップ」の実施手順,活用目的・効果の明確化方策を体系化したワークショップメソドロジについて紹介する。

野村 昌弘, 治田 茂

企業にとって,自社や外部から得られる大量データを,いかにビジネスに活用するかが課題となっている。一方,増え続ける大量データと,データから知識やルールを獲得する技術により,人工知能はここ数年,目覚ましい進化を遂げている。富士通のデータサイエンティストであるキュレーターは,人工知能の技術をビジネスに適用し,データから知識やルールを獲得するというアプローチで,来店予測,故障予測などの特定目的の人工知能と呼べるデータ活用モデルを作成している。この活動は,ビジネスのログとして蓄積されたデータと計算機パワーを使って,業務革新や新規ビジネスを創造しようとするものであり,企業におけるICTの役割が変わることを意味している。
本稿では,大量データを活用するための分析フレームワークや探索的アプローチなどのキュレーターの取組みを解説する。

高梨 益樹, 安藤 剛寿, 槌本 裕一, 亀廼井 千鶴子

富士通では,FJPS(Fujitsu Production System:富士通生産方式)を基軸に据えて,ものづくり環境を日々進化させている。TPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)の導入による現場起点での生産革新活動から始まり,開発部門への活動拡大を経てFJPSとして発展させてきたものである。それらを支えてきた共通事項に,自らが持つICTの活用がある。
本稿では,ものづくりにおけるICT活用,ビッグデータ活用,IoT活用を踏まえた富士通が目指す次世代のものづくり構想「スマートなものづくり」と,その実現に向けた取組みについて述べる。「スマートなものづくり」の社内実践を通して,得られたノウハウ/手法/ツールをリファレンスとしてお客様に提供していくことで,日本の製造業に対するものづくりを支援し,グローバルな競争に勝ち抜くものづくりの実現に貢献していく。

松枝 準, 前田 智彦, 高田 英治, 尾崎 行雄, 小林 泰山, 今野 栄一, 有田 裕一

ビッグデータという言葉が現れた当初は,新たな時代を予見する先進事例が注目された。それは,データサイエンティストと呼ばれる分析の専門家によって実現されていた。その後,ビッグデータの利活用は,営業部門や製造部門のビジネスユーザーの日々の業務にも取り入れられ,現場力向上,現場革新,業務最適化を実現する時代が訪れている。データ分析やICTシステムに精通しないビジネスユーザーが,自らの手で現場視点のビッグデータ利活用に取り組むために,富士通ではデータ管理/分析の統合ソリューションを提供している。
本稿では,富士通が提供するビッグデータ利活用の統合ソリューションへの取組みを,食品業向けのマーケティング・イノベーションの事例を基に紹介する。このソリューションにより,消費者の購買行動に関連する販売データ・市場データ・各種統計データなどの情報を活用して,地域や店舗,商品,消費者層ごとの特性を捉えた高精度のマーケティング分析が可能となる。

倉知 陽一, 小籔 正晴, 大倉 真也

富士通はICTを活用することで社会の抱える課題を解決し,人々の生活を豊かにするソーシャルイノベーションの実現に取り組んでいる。本稿では,その取組みの一つとして,飼主とペットの生活を豊かにすることを目的とした「どうぶつクラウド」におけるビッグデータ活用事例を紹介する。ペットとの生活の変化を背景として,病気の早期発見・予防や,納得感のある医療という飼主のニーズが高まっている。筆者らはアニコム ホールディングス株式会社との協業による情報収集のための基盤形成や,情報の入力インターフェースとなる動物病院向け電子カルテ「アニレセ F」の開発を通して,どうぶつクラウドに収集し管理される動物病院の診療情報の統合分析結果をビッグデータとして活用することで,動物医療への貢献を目指している。

天野 孝一, 今林 徹


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