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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2015-5月号 (Vol.66, No.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2015-5

特集:「金融ソリューション」

本特集号では,社会や環境の変化を踏まえ,金融機関のお客様がビジネスイノベーションに向けた課題解決の施策を立案する際に,参考にしていただきたいソリューション・サービスの取組み事例を多数ご紹介いたします。


執行役員
木脇 秀己
執行役員 木脇 秀己 写真

金融ソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,お客様との共創によるビジネスイノベーションを推進し,その活動を通じてお客様とともに豊かな社会づくりに貢献してまいりたいと存じます。

特集:金融ソリューション 目次〕

チャネル改革

  • 手のひら静脈認証技術を活用した新しいATMサービスの実現
  • チャネル統合基盤システムによる銀行営業店窓口業務の改革事例
  • 金融機関向け次世代チャネルソリューションへの取組み

サービス化ソリューション

  • 日本政策金融公庫様における大規模プライベートクラウドの構築
  • 銀行ミッションクリティカルシステムにおけるプライベートクラウド化
  • 地域金融機関向け業務システムのサービス化と提供に向けた取組み

大量データ/マイニング

  • バッチ高速化ソリューションによる銀行システムの開発効率化への取組み
  • ビッグデータ活用に不可欠なビジネスインテリジェンスツールの効果的な移行
  • 大量データの高速自在検索機能による金融機関の事務効率化

新技術・開発手法

  • 銀行システム向けスマートデバイスアプリケーションの新たな開発手法
  • 金融・保険業界の基幹系業務システム開発におけるアジャイル開発手法の適用
  • ユーザーエクスペリエンスデザインの活用による理想的な保険営業スタイルの実現
  • リバース・イノベーション戦略に基づく金融インフラシステム輸出の実現

コンサルティング

  • タブレット活用による金融機関のワークスタイル変革支援

特集:金融ソリューション


チャネル改革

大垣共立銀行様と富士通が共同で企画・開発した手のひら認証ATMサービスは,富士通が開発した生体認証技術の一つである手のひら静脈認証技術「Palm Secure(パームセキュア)」を用いている。これまでも生体認証技術を用いたATMは存在していたが,取引にはICキャッシュカードが必要であった。本サービスは生体情報をサーバに保管することで,通帳やキャッシュカードがなくてもATMで取引できるようになった。つまり,手のひらがキャッシュカード代わりのATMである。手のひら認証ATMサービスは,主に手のひら認証システム,Web-ATMシステム,勘定系システムの三つが連携している。富士通はこれらのうち,サービスの中核となる手のひら認証システムを構築した。現金を扱うATMに利用することに加え,生体情報という究極の個人情報を取り扱うことから,速い認証レスポンス,不正取引成立の回避,および高度なセキュリティの確保の実現が課題であった。これらの課題を絞り込みキーの工夫や生体情報の暗号化,更に個人が特定可能な情報と生体情報の分離により解決した。
本稿では,手のひら認証ATMサービスの概要,システムの特徴,および今後の展開について述べる。

服部 祐二

富士通は,銀行営業店窓口業務の改革を支援するため,BPM(Business Process Management),BRMS(Business Rule Management System)を活用したチャネル統合基盤システムを提供している。本システムは,煩雑な窓口事務において,勘定系システムやCRM(Customer Relationship Management)システム,印鑑システムなどの関連システムから窓口業務ごとに必要な情報を一括取得し,情報の引継ぎ,加工,マージをしながら,画面を誘導するナビゲーションを実現する。また,画面フレームワークにはAjax(Asynchronous JavaScript + XML)・マッシュアップを活用することで,従来の画面よりユーザーエクスペリエンスを向上させ,事務処理の効率化,およびミス軽減を実現した。更に,本ナビゲーションの実現においては,個別アプリケーションの開発ではなく,事務プロセスや業務ロジックを定義体で作成することにより,法改正やサービス・商品変更に伴う事務処理変更への柔軟な対応をプログラミングレスで可能とした。
本稿では,静岡銀行様における富士通のチャネル統合基盤システムの機能配置,導入効果,将来の拡張について述べる。

高場 健, 毛利 有貴, 冨野 達也

スマートデバイスの普及やビッグデータ技術の進展など,ICTの活用範囲は急速に拡大しており,日々の生活のみならずビジネス領域でも最新のICTを駆使した新たなソリューションが続々と誕生している。これまで,金融機関ではそれぞれのチャネルの機能向上のためにICTを活用し,部分最適を図ってきた。それに加え,これからはICTの活用領域を複数のチャネルを横断した全体最適に拡張し,どのチャネルでも満足度の高い利用客経験価値を創出する必要がある。富士通は,営業店勘定系処理を中核としたチャネルソリューションであるFBC-eX(Financial Business Components with eXtended functionalities)を提供しており,多くの金融機関に採用されている。FBC-eXは市場動向や金融機関のニーズを随時取り込み,持続的にソリューションを拡充していくことを方針としている。現在も最新の技術動向や金融機関のニーズを踏まえた新たなチャネルソリューションの提供による更なる経験価値の創出を目指して,次世代チャネルソリューションの検討を進めている。
本稿では,この次世代チャネルソリューションへの富士通の取組みについて述べる。

古川 奨悟, 田中 義一

サービス化ソリューション

日本政策金融公庫様は,国民生活金融公庫,中小企業金融公庫,農林漁業金融公庫の三つの組織が統合し一つとなった政府系金融機関である。事業統合における課題の一つに,システム面の強化,運用・保守の合理化が掲げられ,その解決手段としてKVM(Kernel based Virtual Machine)をベースに,デファクトスタンダードミドルウェアを選定するとともに,運用管理ソフトを統一し,大規模プライベートクラウドを構築した。それぞれの事業で管理・運用していた業務システムを仮想化したプライベートクラウドで構築し提供することで,各事業は業務アプリを意識するだけで良く,システムの運用負荷が下がり,業務サービスの向上とITガバナンスの強化を図ることに成功した。
本稿では,仮想化したプライベートクラウド構築の目的,プロジェクトを通しての気づきとして,クラウド基盤を構築する上でのポイント,23か月(約2000人月)をかけて行ったプロジェクト運営に関する工夫,および負荷テストにおける注意事項について述べる。また,実運用時に発生したリソース不足に対応して実施したライブマイグレーションによるスムーズな仮想サーバ移動について紹介する。

山本 晃由

東日本大震災以降,災害発生時における事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)の必要性が従来以上に高まっている。一方で,金融機関も他業種と同様に投資の選別を進めており,BCPも聖域ではない。そうした中,社会インフラを支えるミッションクリティカルシステムに相応しい堅ろう性とコスト削減を両立させることが金融機関の課題の一つである。富士通は,仮想化技術とクラスタソフト,およびDBMS(Database Management System)を駆使したプライベートクラウド化によってこの課題を解決した。仮想化集約によってハードウェア・ソフトウェアのコスト削減が実現できるだけでなく,サーバのハードウェア層と連携した障害検知機構により,障害発生時の迅速な検知・切替えが可能である。更に,仮想化基盤全体を富士通がサービスとして提供することで,お客様の費用負担を平準化した。
本稿では,大手銀行における仮想化基盤構築の取組みについて述べる。

倉田 明憲

近年,地域金融機関のお客様においては,業務システムを所有せず,金融機関系列グループの幹事企業主導によるシステム共同化や各ベンダーが提供する業務サービスを利用することで,業務システムのTCO(Total Cost of Ownership)を抑制する傾向にある。これまで富士通は,勘定系を中心としてサービス化を進めてきたが,周辺システムについてはオンプレミスで構築した方が業務サービスを利用するよりコスト面で有利な傾向があり,この周辺システムのサービス化が課題であった。近年,広域高速ネットワークの普及や仮想化技術の進展により,コストを抑えて周辺システムをサービス化することが可能となってきており,このサービス化によりお客様のTCOを削減可能なビジネスの展開を進めている。
本稿では,2014年度に稼働した地域金融機関向け外国為替業務サービスである「国際勘定系業務サービス」の提供に向けた取組みを紹介する。

藤原 靖浩, 一之瀬 洋次

大量データ/マイニング

企業経営に不可欠な情報システムは,データ量の増加やスピーディーなサービス提供などに対応する必要がある。また,こうした時代のニーズに応えつつ,肥大化するシステムのコストも削減する必要がある。FUJITSU Software Interstage Data Effector(以下,Data Effector)は,フラットファイルの大量データ処理を高速化するデータ加工ツールであり,CSV/XML形式のデータを高速・簡単に仕分け・結合・集計できる。これにより,富士通の独自技術を活用した高速なデータ加工,および定義体ベースの記述が容易なアプリケーション開発による効率化を実現する。その具体的な効果は「アプリケーション開発規模の削減」「バッチジョブ数の削減」「処理時間の短縮」である。今回,これらの効果を最大化するため,Data Effector適用に向けたポイントを整理した。併せて,更なる効率化の施策として銀行情報系システム商談を通じ,定義体作成ツールと開発標準を整備した。これにより,アプリケーション開発効率化を実現するバッチ高速化ソリューションを確立した。
本稿では,Data Effectorによるバッチ高速化ソリューションとその効果について述べる。

成嶋 光輝

ビッグデータという言葉が一般的となったように,企業の持つ膨大なデータを活用することは,ビジネスにおける迅速な意思決定や企業価値の向上に重要な役割を持つ。加えて,この膨大なデータを蓄積・分析・解析するためのビジネスインテリジェンス(BI)ツールは更に重要性を増し,必要とする機能も日々高度化し,今後従来のBIツールから最新の高速・高機能なBIツールへの移行も増加することが予想される。このような背景を受け,富士通ではBIツールの利用者,そして業務範囲の拡大という業務要件を実現すべく,クライアントサーバ型のSAP社Business Objectsから最新のWeb型のOracle Business Intelligence Enterprise EditionへのBIツール移行プロジェクトを遂行した。このプロジェクトでは,BIツール間の非互換の解決という大きな課題に取り組みつつ,プロセス,体制,そして成果物に対して工夫を加えることにより成功に導いた。
本稿では,当移行プロジェクトの課題,そしてその解決策について紹介する。

安留 義孝, 松岡 徹

金融機関では,日々業務で発生する膨大なデータから新たな知見を得ようとする取組みが活発化してきている。しかし,金融機関で取扱うデータには様々な形式があり,これらをまとめて保管・管理し,自在に取扱い可能とすることは,従来のリレーショナルデータベース(RDB)では膨大な時間とコストがかかるため,実現が困難であった。富士通はこれまでに,シンプルで分かりやすい設計・運用方式の高速XML型データベースエンジンFUJITSU Software Interstage Shunsaku Data Manager(DM)と,CSV/XMLを高速・簡単に仕分けて結合・集計するデータ高速処理ツールFUJITSU Software Interstage Data Effector(DE)を開発し,様々な業務を支援してきた。これらを組み合わせることで,従来RDBでは実現困難であった課題を解消するのみならず,これまで未活用であったデータを用いた分析も容易に行える可能性が出てきた。
本稿では,DMとDEを活用した大量データの長期保管(10年)と高速自在検索の実現により,某金融機関の事務効率化につなげた事例を紹介し,今後のデータ利活用への可能性について述べる。

邉見 大祐, 汪 静永, 渡部 洋

新技術・開発手法

今日の銀行経営では,他行との差別化を図るためにセールス業務が重要視されている。一方,リテール(一般消費者向け)分野のセールス業務についても,独自色を出すことが必要となってきている。こうした中,業務使用に耐え得るスマートデバイスが充実してきたこともあり,リテールセールス業務のツールはタブレット端末が主流となってきている。そのため,銀行はこれまで勘定系のシステム開発に傾注していたICT投資を,リテール分野のセールス強化を目指し,スマートデバイスのアプリケーション開発に対しても拡充し始めている。従来,銀行のアプリケーション開発の主役であった勘定系システムでは,品質重視の観点から開発期間が長かった。それに対し,銀行が注目しているスマートデバイスのアプリケーション開発には,開発スピードの向上が求められる。ただし,金融システムは社会インフラという観点から,品質基準は勘定系のシステム開発ベースとなっており,スマートデバイスアプリケーション開発においても同様の品質確保が求められた。
本稿では,従来の勘定系アプリケーション開発が長期化する原因を考察し,開発スピード向上と品質確保を両立させる新たな銀行システム向けスマートデバイスアプリケーションの開発手法について述べる。

佐藤 尚哉

市場の急激な変化や,利用者ニーズの変化など不確実性が高まる中,短期開発と柔軟な仕様変更を実現する手段として「アジャイル開発手法」が注目されている。国内では社内システムやWebサービスの分野で普及が進んでいる一方で,基幹系業務システム開発への適用事例は極めて少ない。富士通は,ユーザー企業である東京海上日動システムズ株式会社様と協同で金融・保険業界の基幹系業務システム開発では前例の少ないアジャイル開発手法の適用に取り組んだ。基幹系業務システム開発の特徴を踏まえ,アジャイル開発手法に関する課題を設定し,プロジェクト体制や見積り・開発計画を策定した。また,開発者の意識変革をもたらす新たな開発プロセスを実践した。
本稿では,アジャイル開発手法による基幹系業務システム開発の事例を紹介する。

古田 満

保険業界においては,営業活動や事務手続きのワークスタイル変革によりスマートデバイスへの需要が高まっている。コンサルティングから商品提案,保険申込み手続き,契約の保全対応に至るまでをスマートデバイスで行うことによって,契約までの時間短縮や効率化が可能となる。一方で,業務効率や経費削減を優先したシステム開発の場合,営業職員が接客で必要とする機能を満たしていないケースが多い。このため,スマートデバイスは有効活用されず,携帯率が低下している。この問題を解決するには,お客様の視点や営業職員の働き方を基に,システムをデザインすることが重要な鍵となる。
本稿では,保険営業におけるスマートデバイスの活用について営業職員の「ありたい姿」と本社部門の求める「あるべき姿」を明確にし,双方の視点から理想的な営業スタイルを実現するユーザーエクスペリエンスデザインを用いたシステム化のアプローチ手法について述べる。

奥田 琢馬, 横田 洋輔

日本の社会を支えているインフラシステム輸出への挑戦が,官民一体で始まっている。富士通は,インフラシステム輸出を進める日本企業の支援ビジネスにおいては一定の成功を収めている。一方,海外の行政監督機関や企業に対して直接インフラシステムを輸出するビジネスでは苦戦をしてきた。これを解決すべく,グローカリゼーション戦略を捨て,これまでの取組みと全く異なったリバース・イノベーション戦略に基づいた戦略商品FUJITSU Financial Services Solution RAPORTADOを開発した。これにより,富士通はASEAN市場に参入することに成功した。リバース・イノベーション戦略は,インフラシステム輸出にまつわる課題の多くを解決する。
本稿では,RAPORTADOのグローバル市場における実例に基づいて,金融インフラシステム輸出におけるリバース・イノベーション戦略の重要性について述べる。

澤野 佳伸

コンサルティング

近年,国内金融機関においてはタブレットなどのスマートデバイスを活用したワークスタイルの変革が進みつつある。既に本格的にタブレットを導入した金融機関では,特に渉外担当者の生産性を向上させることを目的にしていることが多い。例えば,タブレット導入によって外出先で顧客情報を閲覧したり,電子化した資料で説明したりするなどして,訪問の準備時間や無駄な再訪問を削減し,それによって生み出された余剰時間をほかの営業活動に充てようというものである。しかし,単にタブレットを導入するだけでは期待した効果を得ることは難しい。導入の際には,現場部門を含めた関係者が一同に会する場を設定し,どういう目的で導入し,どのように業務を変えるのかを検討していくことが重要である。また,どのようにして「継続して利用される」仕組みにするかの検討も併せて行わなければならない。
本稿では,こうした一連の検討を支援する富士通総研のコンサルティングサービスを紹介する。

小川 泰幹


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