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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2014-1月号 (Vol.65, No.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2014-1

年頭ご挨拶

特集:「テクニカルコンピューティング」

本特集号では,海外における気象・防災・環境,天文・計算科学,および国内の社会システム,先端研究・シミュレーション事例を紹介いたします。


テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部長
山田 昌彦
テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部長
山田 昌彦 写真

テクニカルコンピューティング特集に寄せて(PDF)

今後,テクニカルコンピューティングは,世界的に拡大し,ますますその重要性を増していくものと確信しています。本特集の発行に当たり,あらためて富士通のテクニカルコンピューティング分野におけるシステムやソリューションにご関心を持っていただき,今後ともより一層のご指導を賜りますようお願い申し上げます。

特集:テクニカルコンピューティング 目次〕

特別寄稿

  • スーパーコンピュータ「京」を用いた防災・減災研究

海外社会システム事例

  • サウジアラビアMEMSプロジェクト環境監視システム
    ~海外ソリューションビジネスへの取組み~
  • タイ王国マプタプット工業団地向け大気環境監視システム
  • 地球観測衛星を利用したアジア太平洋域災害管理システム
  • 台湾中央気象局(CWB)数値気象予報システム

海外先端研究・シミュレーション事例

  • 宇宙の起源に迫る大型電波望遠鏡「アルマプロジェクト」向けスーパーコンピュータ:ACA相関器システム
  • HPC WalesにおけるHPC活用に向けた取組み
  • 計算化学統合プラットフォームSCIGRESSの産業・教育における適用事例

国内社会システム事例

  • 放射線モニタリングデータ統合システムの構築

国内先端研究・シミュレーション事例

  • 東京大学情報基盤センターFX10スパコンシステム(Oakleaf-FX)活用事例
  • 武田薬品工業株式会社様向け電子実験ノートシステム導入事例
  • 製造業における電磁波解析ソフトウェアPoyntingの活用事例

特集:テクニカルコンピューティング


特別寄稿

日本では,毎年のように自然災害による重大な被害を被っていることから,迅速で効果的な対策が喫緊の課題となっている。独立行政法人海洋研究開発機構では全国の大学や研究機関と共同して,文部科学省のハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)戦略プログラムにおける分野3「防災・減災に資する地球変動予測」の研究を実施している。分野3ではスーパーコンピュータ「京」などを用いて自然災害に関する大規模で高精度のシミュレーションを行い,実際の防災・減災に資することを目指している。既に,台風の発生を誘発することが知られている熱帯季節内振動に関する高精度な予報スキルの計測や,日本国内で発生した竜巻の観測結果と高い合致性を示す計算結果,従来をはるかに上回る高速な地震動計算の実現,南海トラフ地震発生時の高解像度で高精度な津波シミュレーション結果,高精細な建物の地震応答解析,知的エージェントによる避難シミュレーションの実現などといった研究成果が得られている。
本稿では,これらの研究成果を紹介する。

上原 均, 安藤 和人

海外社会システム事例

MEMS(MODON Environment Management System)プロジェクトは,経済産業省からの「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査)」による,環境配慮型工業団地構築に向けたフィジビリティスタディより始まった。約1.5年間のフィジビリティスタディにおいて,富士通グループを中心とした富士電機,メタウォーター,環境計測,みずほ銀行,大学,川崎市といった各分野のエキスパートとのコンソーシアム体制を構築し,その結果を基にした共同提案活動の成果として,MODON(Saudi Industrial Property Authority;アラビア語で都市の意)が管轄する主要な3工業団地における一般大気,排出源大気,用水・排水の環境監視(MEMS)プロジェクトを受注した。
本稿では,MEMSプロジェクト受注に至った背景,プロジェクト遂行時の経験,ノウハウ,システム概要,作業経過,今後の展開について述べる。

白石 直樹, 矢部 典雄

富士通は,タイ東部のマプタプット工業団地周辺における大気環境改善を目的として,タイ工業団地公社とチュラロンコン大学に大気環境監視システム(VM-EIMS:VOCs Monitoring and Environmental Information Management System)を導入した。本システムの監視対象物質は,VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)19物質,悪臭物質10物質とオゾンである。測定データに対する「解析」と「公開」の機能においては,専門家の知見を生かした先進技術を適用した。また,大気拡散予測シミュレーションによるデータ解析を行うため,富士通のテクニカルコンピューティング技術を活用したPCクラスタシステムを整備した。シミュレーション実行環境を整備するだけでなく,シミュレーション実行や解析方法に関するタイ研究者への技術トレーニングを開催し,大気環境研究の技術移転活動を行った。測定データおよびシミュレーション結果を一般公開し,更に一般ユーザーから汚染物質に関する情報提供を受け付ける機能も設けた。
本稿では,これらの事業活動における試みと成果を紹介する。

鈴木 智美, 朱里 秀作, 寺西 広太郎, 藤井 悟司

2005年にアジア・太平洋地域宇宙機関会議(Asia-Pacific Regional Space Agency Forum:APRSAF)において,「アジア防災・危機管理システム」として「センチネルアジア(アジアの監視員)」が提唱された。センチネルアジアとは,14か国23機関および4国際機関(当時)が参加した国際プロジェクトであり,アジア太平洋域における自然災害による被災者と社会的損失を軽減することを目的としている。センチネルアジアは,アジア太平洋域への貢献を目的として独立行政法人宇宙航空研究開発機構が事務局となり活動している。アジア太平洋域災害管理システム「センチネルアジアSTEP2(以下,センチネルアジアシステム)」は,災害発生時に地球観測衛星が取得した地上の状況などの災害関連情報を被災国の防災機関に提供するシステムであり,富士通は2008年から開発を進め,2010年3月31日より運用に供している。
本稿では,アジア太平洋域の災害監視をICTで支援すべく,富士通が構築したセンチネルアジアシステムの概要と適用した技術について紹介する。また,センチネルアジアシステムの利用実績を併せて紹介する。

有山 俊朗, 齋藤 悠

台湾全土の気象,地震,津波などのモニタリングおよび予報を行う政府機関である交通部中央気象局(CWB:Central Weather Bureau)様では,数値気象予報(NWP:Numerical Weather Prediction)システムとして,FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX10を中核に構成したスパコンシステムを2012年から2014年にかけて,第1~3期に分けて段階的に導入している。
本稿では,第1期導入としてスーパーコンピュータ「京」(「京」は理化学研究所の登録商標)の技術をベースに開発した新型スーパーコンピュータであるPRIMEHPC FX10の海外初出荷となった中央気象局様の数値気象予報システムの概要とその特長について説明する。

竹原 文博, 林 秀範, 藤田 淳一

海外先端研究・シミュレーション事例

自然科学研究機構国立天文台様は,米欧の天文台と共同で,チリにおいて大型電波望遠鏡アルマ(正式名称:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)プロジェクトを推進している。富士通グループは大型電波望遠鏡で収集したデータを処理する専用スーパーコンピュータ「ACA相関器システム」を開発した。本システムは,PCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」35台から成る相関器制御システムと,富士通アドバンストエンジニアリングが開発したACA相関器で構成され,望遠鏡のアンテナが受信する毎秒5120億個の電波信号データを毎秒120兆回(120 TOPS)の計算速度でリアルタイムに処理する性能と,標高5000 m,0.5気圧という過酷な環境での安定動作が求められる。本システムでは,計算性能を実現するためにコストパフォーマンスに優れたFPGA技術を採用し,安定動作を実現するためにディスクレスシステムの採用,低圧環境下での長時間稼働テストの実施やリモートメンテナンスシステムの採用などを行った。2011年から初期科学運用を開始し,試験観測を経て,2013年の開所式を無事に迎えるに至っている。
本稿ではACA相関器システムの全体像と,計算性能の達成および安定動作実現のために行った様々な施策について述べる。

阿部 勝己, 堤 純平, 檜山 貴博

英国HPC Walesは,英国政府,ウェールズ政府,EUおよび富士通との連携により,ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術を利用して,研究促進,HPC人材の育成を行い,産業活性化を目標としたプロジェクトを遂行している。富士通は特にHPCシステム基盤の導入,および運用支援,HPC技術の移管,共同研究支援を行うなど,HPC Walesと連携して,そのプロジェクトを支援している。
本稿では,本活動を支えるシステム,およびそれを用いたHPC活用に向けた取組みについて説明する。

倉石 英明, 岩谷 正樹, 万谷 哲, 山田 基弘

SCIGRESS(サイグレス)は,富士通が開発したコンピュータシミュレーションのソフトウェアで,原子や分子といったミクロなレベルの状態や挙動をコンピュータ上で解析することができる。製薬企業が医薬品の設計を行う際,実験による検証が必要であるが,全てを実験で賄おうとすると多大なコストや時間を要する。SCIGRESSは,実験の一部をコンピュータ上で実現し,設計フェーズの大幅な時間短縮とコスト削減を可能にする。また,SCIGRESSは教育用のツールとしても利用価値が高く,大学の有機化学の授業で利用されることが多い。特に芳香族化合物の共鳴理論に関しては,講義や教科書だけでは誤った解釈をする学生が多く,SCIGRESSを用いて3次元の可視化を行うことで正しい理解を促すことができる。
本稿では,フランスの大手製薬企業Sanofi S.A.が薬物の分解予測に適用した事例,およびドイツのUlm大学が有機化学の授業に適用した事例を紹介する。

Nicolas Marchand, Philippe Lienard, Hans-Ullrich Siehl, 伊里 治展

国内社会システム事例

放射線モニタリングデータ統合システムは,「ふくしまの子どもたちを守る取り組み」として平成23年度2次補正予算で国より要求された環境放射線を監視するシステムである。本システムは2011年12月,文部科学省から富士通が受注し,システムを構築した。2013年4月からは原子力規制庁に運用が移管されている。2012年2月半ばのモニタリングデータ一部公開(受注後75日)と同年4月からの本稼働を達成し,現在も安定稼働を続けている。また,本システムの情報公開サイトは2012年度のグッドデザイン賞を受賞した。
本稿では,本システムを構築するに当たっての課題(短期開発,デザイン性,レスポンスなど)と,これを解決するためのノウハウ{クラウドサービスの利用と既存製品の活用,データ処理プロセスの分離,WebデザイナーとOSS(Open Source Software)の採用,Ajax(Asynchronous JavaScript+XML)の採用など}について述べる。

北舘 智, 蓮沼 潤一, 佐藤 智昭, 石田 光輝

国内先端研究・シミュレーション事例

東京大学情報基盤センター様の大型計算機センターは,全国共同利用施設として,多様な利用者ニーズに対応されている。そこで,スーパーコンピュータ「京」に適用した技術を更に進化させ,高性能と省電力を両立した富士通製の「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX10」を中核としたシステム「Oakleaf-FX」の本格運用を2012年4月から開始した。Oakleaf-FXは,2012年6月に実行性能1 PFLOPS(世界18位)を達成した76 800 CPUコアで構成される大規模超並列スパコンで,学内外で1500名以上の利用者が様々な先端的研究開発・教育活動に利用する。富士通は,アプリケーションの高い実行性能,使いやすいシステムと柔軟な運用環境,更には省電力という課題解決に向けたアプローチを行っている。
本稿では,Oakleaf-FXのシステム概要,スパコンに求められている課題と課題解決の施策について紹介する。更に,Oakleaf-FXを活用した様々な研究成果が報告されており,アプリケーションの成果事例として四つの分野についても報告する。

坂口 吉生, 小倉 崇浩

武田薬品工業株式会社様では,新薬の開発における費用の増大,特許係争対策,コンプライアンス対策の三つの課題に直面されていた。これらの課題を解決するために,武田薬品工業株式会社様と富士通は共同で研究情報の電子化を図るための電子実験ノートシステム(E-Notebook)と,その情報を活用するための外部システム(長期署名システム,法規制チェックシステム,試薬データベースシステム)と連携するシステムを構築した。この結果,化合物合成研究の入力と記録の効率改善,法規制に該当する化合物合成の防止によるコンプライアンス遵守,および電子証明書を用いたタイムスタンプサービスによる新薬開発時期の第三者証明を実現している。これらの合成研究業務,コンプライアンス対策,特許係争対策の効率改善を達成したことによって,創薬研究活動の品質向上を果たしている。

原田 明彦, 久保木 俊彦, 萩原 稔

電子機器の設計開発分野において,実装技術の進歩と外部規制の厳格化により設計難易度が上昇している。特にEMC規格への適合は設計段階での対策が難しく,開発工数が増加する要因となっている。そこで,上流工程であるプリント基板の設計段階でシミュレーションによる仮想的な評価を実施することにより,試作と測定評価の工数を大幅に削減する取組みが進められている。EMC対策においては,プリント基板・配線・筐体を含む製品全体をモデル化して電磁波解析を実施することにより,設計段階での検証が可能となる。富士通ではこのような用途に適用するため電磁波解析ソフトウェア「Poynting」を開発した。PoyntingはPCクラスタを用いた大規模モデルの高速解析に対応しており,電子機器のノイズ解析に適している。
本稿では,Poyntingの機能と特長を説明し,パワーエレクトロニクス機器のEMI解析,プリント回路基板の近傍電磁界,およびESDの課題に対して,社内外の製品開発の現場で活用された事例を紹介する。

小田島 渉, 巨智部 陽一, 小田 恭裕, 藤田 和広


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