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特別対談 ~社会と呼吸するように対話し 環境経営を進化させる~

富士通は、環境経営においても積極的な取り組みを進めている。その特長的な活動として「環境ダイアログ」というものがある。NPO、大学、メディアなどさまざまな分野から有識者を招いて行う対話の場で、社会から企業への期待や要望を把握するとともに、富士通の環境経営の改善や環境施策立案のきっかけにもなっている。環境ダイアログは2011年度に開始、これまでに計25回を数え、招いた有識者はのべ80人に上る。その意義や波及効果について、同社環境本部 本部長の竹野 実と、幸せ経済社会研究所 所長の枝廣 淳子氏が語った。

社会の動きを把握し 問題解決を送り出す

枝廣淳子氏竹野: 環境ダイアログは、社会との、より本質的な関わりを求めて始めたものです。有識者を通じ、当社の環境への考え方や行動を、社会に理解していただく一方、当社はより客観的に社会の課題や要望を知ることができます。回を重ね、当社の開発や事業部門の参加者が広がるにつれ、社員の意識の変容など、予想しなかった効果も出てきました。継続的に、オープンに実行することの大切さを感じています。
枝廣: 環境ダイアログではウェブやプレス発表では伝えきれない事業の本質や動機まで伝えることができますよね。加えて、そこから生まれる人間的なつながりも見逃せません。
竹野: まさにそうです。当社と有識者だけでなく、有識者同士でもネットワークが広がり、生態系のように息づいています。
枝廣: 私は、企業にとって社会との対話は、“呼吸”のようなものだと思います。企業の存在意義は、その時代、その社会の問題解決。ですから現状はもちろん、今後の動向を示す情報を吸いこみ、問題解決を吐き出す必要があります。その意味で、環境ダイアログは大きな役割を果たしていると思います。

共創がもたらす 長期的・多面的成果

富士通 環境本部長 竹野 実 竹野: 有識者の方々は、私たちが気づかない広い視野、時代背景などをご存知で、厳しい意見や改善提案なども含めて話していただけるのはありがたいですね。
枝廣: 環境ダイアログのプロセスは、教育に似たところがあります。短期的成果だけでなく、中・長期的成果を目指すことができますし、参加者に体験や気づきをもたらすところも似ています。また、これまでは企業にとって社会は市場、場合によっては対立的存在でした。しかし対話によって、企業と社会は、共に幸福を創り出す“共創”の同志になり得ます。
竹野: 事実、インドネシアの電力モニタリングへのICT活用のように、ダイアログをきっかけに始まった事業もあります。たまたまお招きした有識者から話題が出て、発展していったものです。
枝廣: 対話の場が、予想もできない成果を生み出す、“創発”の場になった例ですね。
竹野: 国内の例では小・中学校で行っている「環境出前授業」に“地球一個分で暮らすために”というプログラムがあります。これはWWF(世界自然保護基金)の方との対話によって内容が大きく進化しました。もっと「富士通らしさ」を活かしたものにしようと議論を重ねた結果、生徒たちが地球資源の大切さを実感でき、またICTも学べるプログラムになったのです。その内容は、ボランティアで講師を務める富士通社員にとっても有意義なものとなりました。一つの授業が、会社の外にも内にも大きな影響をもたらしたのです。

次世代に向けて より深く、より広い対話へ

竹野: 環境への取り組みを社会に伝えるとき、実行した事例だけでなく、理由や背景、経緯や今後の方向まで伝えることが重要な時代に入ったと思います。いわば、ビジョンとストーリーが必要だと感じます。
枝廣: 環境ダイアログの今後を考えると、先日の25回目のプレゼンテーションを参加者全員が英語で行ったことも画期的でした。こうした試みは増えてくると思います。
竹野: 海外も意識した展開に加え、これからは異業種企業の参加も期待したいですね。ビジネスが一社だけでは成り立たない今、環境への取り組みも同じだと思います。
枝廣: なすべきことについて私は、重要かどうか、緊急かどうか、の二軸を組み合わせて考えます。当然、「緊急で重要なこと」を最優先で実行しますが、その次が問題で、人はつい「緊急だが重要ではないこと」に手を付けがちです。しかし長期的に考えたら、「緊急ではないが重要なこと」に取り組むべきなのです。富士通の環境ダイアログは、その意味でも注目すべき機会になっていると思います。
竹野: ありがとうございます。これからも次世代に向けて、より広く、より深い対話の継続を目指していきます。

環境ダイアログ参加者からのメッセージ

株式会社大和総研 調査本部 主席研究員 河口 真理子氏

河口真理子氏
非常に専門性の高い内容を討議することができ、私の方が多くの気づきを得る機会をいただき感謝しています。
幅広い環境問題に対して、その分野の第一人者を招き、本部長や部長クラス以外にも多くの社内関係者が参加し、会社にとって都合の悪い話もオープンに話し合われています。知識だけでなく肌感覚の当事者意識や、異なる立場の意見を戦わせることで柔軟な思考の醸成など、環境リーダー企業としての底力になっているのを実感いたします。
環境経営において、社内理解を得るためにやらなければならないのは、「危機意識を持つ工夫」「認識を高める工夫」。
環境のリスクを経済のリスクとして認識してもらうために、環境経営企業のリーダーとして取り組んでください。

サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 後藤 敏彦氏

後藤敏彦氏
環境課題に対する取り組みを、幅広くよく考えられていると感服しました。ICTソリューションなどのソフトとモノづくりとが半々というのは、ユニークなビジネスモデルだと思います。その特徴を21世紀のビジネスモデルとして、どう進化させていかれるのか興味を覚えました。
私が参加した2015年6月のダイアログ時点では、まだ実現していませんでしたが、2015年は国連の「持続可能な発展のためのアジェンダ2030(SDGs)」と「気候変動枠組条約COP21でのパリ協定の採択」で文明のベクトルが変わりました。ダイアログでも言及しましたが、2050年に向けたゴールがほしい所です。「ゴール」は「アスピレーション(強い願い)」であり、「必達」という背後霊のつく「目標」ではありません。


本コンテンツは「日経エコロジー」 2016年4月号に掲載された内容より転載したものです。