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2012年度のステークホルダーダイアログ(第1回)

第1回「多様性と人材育成」

富士通グループは「地球と社会の持続可能な発展への貢献」をCSRの基本方針に掲げ、活動基盤の強化として「多様性の受容」と「人材育成」に取り組み、従業員が自分ならではの付加価値をいきいきと発揮する会社となることを目指しています。

CSRの本質は、社会の変化に先んじてステークホルダーの期待や要請を経営に取り込み、私たちが提供する価値を進化させることです。ビジネス・サイクルが速くなり、「応用力」が求められる「解のない時代」においては、対話を通じて「解」を見出していかなければなりません。特にダイバーシティや人材育成の推進にあたっては、法律やルールを画一的に適用するだけではなく、社会情勢を踏まえて柔軟に対処していくというスタンスがグローバルに求められています。

本年度はこれらの分野について、社外有識者を招いて数回にわたり対話を行い、今後の経営の革新に役立てたいと思います。本年度第1回の座談会「多様性と人材育成」の概要を下記にご紹介します。

◆実施日:2013年1月10日
◆参加者:
<有識者>
東京大学大学院 情報学環教授 佐藤 博樹 様
東京大学大学院 総合文化研究科准教授 金子 知適 様 ※略歴添付
<富士通>
代表取締役副社長 藤田 正美
FUJITSUユニバーシティ 会長兼社長 近間 輝美
総務人事本部長 植栗 章夫
ダイバーシティ推進室長 塩野 典子
CSR推進部長 藤崎 壮吾

※出席者の所属、肩書きはダイアログを開催した当時のものです。

佐藤:ダイバーシティ・マネジメントにおいて、「ダイバーシティ」と「多様な人材が活躍できるマネジメント」を区別して考えることが重要です。企業側は、多様な人材それぞれが活躍できる制度や仕組みを提供する必要があります。またその中で会社の経営理念を明確に示さなければなりません。多様な社員が何かを判断する際に、会社の経営理念の実現に貢献できるかを、一人ひとりが判断しなくてはならない場面が出てきます。新しいビジネスを創出する際、それぞれの事業が世の中に貢献しているかを社員一人ひとりが考え直す必要があります。「好奇心」をもった社員が集まり、課題解決について討議できる仕組みも必要です。

佐藤 博樹 様 東京大学教授の写真
佐藤 博樹 様 東京大学教授

藤田:これまでそういった判断は社内規定で0か1を決めていましたが、ビジョンとなると幅が広がります。何が企業理念に近いか、つまり何が社会に貢献しているかを選択することになり、「価値観」の共有の必要性を感じました。考え方は多様であっても、目指すところは一緒でないといけません。今我々は「ユーザーの課題解決」という視点が強いですが、これから富士通のCSRの視点で考えると、そこからさらに先にある「社会の課題解決」に目を向けていかなければなりません。

藤田 正美 副社長の写真
藤田 正美 副社長

金子:私が専門とする機械学習の分野の話ですが、近年コンピュータ将棋の世界では、数万棋譜のプロ棋士の指し手を手本に、10の70乗ともいわれる広い局面に応用可能な知恵を学ぶ力が必要とされています。はっきりとした正解があるパターン認識の学習と比べ、棋譜には棋士の個性も現れます。これらの背景でコンピュータにデータを丸暗記させるのではなく、指し手の背後にある判断を推測しながら、プログラムを微修正させて学習させていきます。また、東大の教養学部では「情報」の授業が必修になっていますが、文系の学生から「なぜ情報の授業が教養学部で必要なのか?」と問われることがあります。「背後にあるものの考え方や試行錯誤する力を学ぶためである」と、その必要性を説明しています。企業での人材育成の考え方もこれに近いのではないでしょうか。

金子 知適 様 東京大学准教授の写真
金子 知適 様 東京大学准教授

近間:変化の激しい時代では、求められるスキルも日々変化し複雑化しているため、「応用力」が必要となります。従来のやり方だと変化のスピードに対して学習スピードが間に合わなくなるため、何をやるべきかを考える力や、学びやイノベーションを生み出す型のようなものを身に付けるのが良いかもしれません。その意味で、価値観の理解や人間関係構築力などの人間力を鍛えることが、変化の激しい時代への対応において重要性を増しているのではないかと思います。これからも、ICTの活用により、単純作業からの解放や価値のある仕事が創出できるように人間をエンパワーしていきたいと思います。

近間 輝美 FUJITSUユニバーシティ 会長兼社長の写真
近間 輝美 FUJITSUユニバーシティ 会長兼社長

佐藤:ICTを活用した働き方に関して言えば、場所を問わず働ける時代になっています。一方で労働法やセキュリティのような統制の問題もあり、技術的な可能性と社内規制の問題にどう対応するかが課題です。日本は、社内情報の管理に厳しく、在宅勤務がなかなか広がりません。会社と個人の責任をはっきり分けて、個人の責任の部分をもう少し与え、自由に働かせる環境を整備しても良いと思います。ICTの活用でいろいろな働き方ができるようになりますので、会社と個人の責任の切り分けがこれから非常に重要になります。

植栗:職場が多様化し、様々な考えを持つ人が増えてきている中で、一つの制度ですべての社員を満足させることは困難です。上司と部下の意見や考え方が相違する場合、職場で十分なコミュニケーションにとることによって納得性が高められます。制度や仕組みだけではなく、ビジョンや理念で縛るという、働き方のあり方を模索していきたいと思います。

植栗 章夫 総務人事本部長の写真
植栗 章夫 総務人事本部長

塩野:富士通では「社員一人一人がいきいきと働ける職場づくり」、「新たな価値の創造」、「社会との共存共栄」を実現させることを目標に、活動を行っています。富士通のダイバーシティ活動を推進するうえで、今回の座談会を通じていただいた意見を今後の活動につなげていきたいと思います。

塩野 典子 ダイバーシティ推進室長の写真
塩野 典子 ダイバーシティ推進室長

金子:コンピュータ将棋では意見が別れた場合は多数決で決めますが、展開や価値判断の共有をもっと深く掘り下げれば、人工知能がさらに進化して私たちを単純労働から解放できるかもしれません。グーグル検索の使い方が仕事の効率性を左右するように、ICTによって生活も仕事も変わっていきます。製品・サービスを提供する立場としては、どのような社会を作ろうとしているのかを明確にして社会に伝えていく必要があると思います。

藤崎:「解のない時代」の中で、何か「解」を見出さなければならないとき、対話を通じた解決策の検討が重要になります。その対話には、多様な考え方やそれに共感する心、さらには、好奇心や意欲も必要になってきます。ICTを活用し、障がい者や外国籍の方など多様な方のコミュニケーションを支援する方法も出てきています。

藤崎 壮吾 CSR推進部長の写真
藤崎 壮吾 CSR推進部長

藤田:今までのトップマネジメントは、0か1の判断でよかったのですが、今後、曖昧性の中でビジネス・ジャッジメントをする場合、その判断に対して納得性が持てるように、ベーシックな教養と説得術に裏付けされた言葉や説明の仕方などが非常に重要だと感じました。 今回の座談会では、「多様性が高まるほどビジョンが重要になる」ということ、「人工知能が進化する中で人間らしい働き方とは?」など考えさせられる点が多々ありました。これらの示唆を、今後のCSR活動に活かしていきたいと思います。

出席者プロフィール

東京大学大学院 情報学環教授 佐藤 博樹 様の写真

東京大学大学院 情報学環教授 佐藤 博樹 様
1981年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。1981年雇用職業総合研究所(現労働政策研究・研修機構)研究員。1983年法政大学大原社会問題研究所助教授。1991年法政大学経営学部教授。1996年東京大学社会科学研究所教授、2011年より現職。

専門は人的資源管理。兼職として、内閣府の男女共同参画会議議員、やワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員など。著書に、『人事管理入門(第2版)』(共著、日本経済新聞出版社)、『男性の育児休業』(共著、中公新書)、『職場のワーク・ライフ・バランス』(共著、日本経済新聞出版社)、『人材活用進化論』(日本経済新聞出版社)など。


東京大学大学院 総合文化研究科准教授 金子 知適 様の写真

東京大学大学院 総合文化研究科准教授 金子 知適 様
東京大学 大学院 総合文化研究科 広域科学専攻広域システム科学系。准教授。2002年3月東京大学大学院・総合文化研究科・広域科学専攻・博士課程修了。2012年4月より現職。

将棋や囲碁などの思考ゲームを題材に、ゲームプログラミングや機械学習を中心に、人工知能が人間を越えるために計算能力を効果的に活用する探索技術の研究に従事。人間の判断を支援するための科学の応用とコミュニケーションのあり方についても研究も行っている。共著に『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』(技術評論社)、『コンピュータ将棋の進歩6』(共立出版)