2009-08-01
富士通(中国)信息系統有限公司
金融危機の中で業績低迷にあえぐ企業が多いなか、快進撃を続ける外食チェーンがある。味千ラーメンである。2007年3月に香港証券取引所に上場を果たして以来、多店舗戦略に拍車がかかり、店舗数は現在347軒(09年6月4日時点)、2~3年後の大台達成も現実化してきた。日本の風味・品質を原点とし、中国の風土に合致したノウハウで市場を席巻する味千ブランド。その快進撃を支える陰には、頼もしい“IT軍師”の存在があった。

多店舗展開を進める味千ラーメン
多店舗展開のカギ、それは言うなればQSCA(Quality(クオリティー)、Service(サービス)、Cleanliness(クレンリネス)、Atmosphere(アトモスファア)をいかに実現するかにあるといわれる。「標準化」された作業フロー、制度、品質、サービスを、組織の各部門・職場全体に徹底させていくこと。そのノウハウをいかに確保するか。それこそ各チェーンブランドが懸命になって探し求めるソリューションである。
08年に上海本部が設立以来、ITインフラの整備・改善は避けては通れない経営テーマであるとし、プロジェクト推進を担ってきたのが味千(中国)控股有限公司・資訊部総監(ITディレクター)の王芳興氏である。
業界関係者によれば、店舗数が200店舗を超えたとき、そのチェーンブランドは規模の臨界点に達するという。このハードルを見事にクリアし、いま快進撃を続ける味千が次なる目標として設定するのが「数年内に1000~1200店舗」という大台達成だ。これを実現するためには、全国8つの分公司、ひいてはその傘下にある店舗に対する本部の指導を徹底していかなければならない。「味千の生命力となっているのは、標準化」(王氏)――そんな観点から王氏はIT改革に挑み始めたのだった。
味千(中国)控股有限公司・資訊部総監の王芳興氏
どの店でも同じメニューとサービスを提供」という店舗“複製”の実行は言うには易しい。しかし、味千の場合は、その標準化レベルに対する要求が極めて高い部類に属していた。たとえば、料理メニューの豊富さがある。王氏いわく、現在、味千が有するメニューは300種に及ぶとされ、そのうち20~30%の品を半期ごとに変更しているという。「良心品質、健康第一」は味千ブランドのキャッチフレーズだが、メニュー数だけをとっても、味千の「標準化」の難度が極めて高いことが容易に想像される。
また、全店舗の営業データを集中的かつリアルタイムに管理するうえでも課題は多い。飲食業界の特殊性というべきか、味千の各店舗には毎日、営業ピークとなる時間帯があるからだ。データ転送の際に、停電やインターネットに不具合の発生といったリスクにどう対処するのか。データの紛失、管理の漏れがないように高速かつ安定したシステムにするにはどうすればよいか。また、昨年より施行された労働契約法の規定に合致するように大量の従業員を事故なく管理・評価を行っていくにはどうすればよいのか……。そんな多くの問題解決が焦眉の急となっていた。
"IT軍師"王芳興氏とがっちり握手をかわす富士通(中国)信息系統有限公司の袁震部長(右)
同社が先立って導入していたERPシステムとインターフェースをつくり、効率的かつ安定した情報ソリューションをPOSシステムによって構築する――こうした課題解決を担ったのが富士通(中国)信息系統有限公司である。
王氏は10社ほどのベンダーをコンペにかけ、最終的に富士通(中国)をパートナーとして選択した。その理由を氏は、「世界的な富士通ブランドに対する信頼感、それに今後のシステムの拡張性への期待、アフターケアの保証などを加味すると、長期的な成長戦略をとる弊社にとってふさわしいパートナーだった」と述懐している。
富士通(中国)はその後、味千における営業部、財務部など多くの部門とのミーティング及び交流を同社情報部門のスタッフとともに続け、店舗現場の作業内容やフローを綿密に調査研究していったという。ピーク時の平均取引量、注文率、1テーブル当たりの利用率、厨房の稼働情況などの指標や、注文・在庫・消耗状況に関する情報、また関連取引データや第一線作業者のニーズといったものを吸い上げていった。このような地道なプロセスを経て、高効率で正確な分析が可能となり、その後のソリューションはより成熟したものに仕上がっていった。
そして、ERPシステムとのデータインターフェースを通じて、データ伝送・会計清算の自動化が実現されたことで、企業財務および営業部門のコスト、ひいては多店舗展開に伴うリスクが大幅に低減されていくことになる。なお、これに合わせて、富士通(中国)は新店舗開設をよりスムーズに行うために、システムバックグラウンド対応の教育訓練用ビデオを作成するなどアフターフォローにも入念な対処を行っている。
王氏は、富士通(中国)が導入する以前のPOSシステムを評して「正直な(honest)なデータが上がってこなかった」と振り返る。分析対象とならないジャンクデータが多く混じっていたというのだ。その点、いまでは各店舗から吸い上げられる情報は一目瞭然、これをもとに次の経営戦略へとスピーディにつなげられていくのだという。
王氏は「中国で多店舗展開を進める外資チェーンは多い。しかし、人的コスト等の超過などから収益を圧迫しているケースが多いのでは」と説く。「多店舗展開には拍車がかかっている。しかし、富士通(中国)をパートナーにして以降、弊社のIT人員数は変わっていない」と王氏。システムの肥大化に伴う人的投入の強化という矛盾を、富士通(中国)は見事クリアしたのだった。
昨今、大手旅サイトC-tripと提携し、同サイト利用者に優待券をプレゼントするなどの特典サービスを始めた。POSシステムと経理システムなどを連携させ、クレジット決済や税額の自動算出などを一元的に管理するといった以外にも、さまざまな機能拡張の整備を進めていくに違いない。
ひとつ面白いエピソードがある。味千は以前、カード支払いを昨年まで認めていなかった時期がある。銀行に支払う2%という手数料を削減したいという要望が管理層に根強く存在したからだという。しかし、業務部門が管理層を説得し、いざカード支払いを受け付ける体制に移行するや、25%の売上アップしたのだという。1人あたりの消費額が増えたからだ。IT投資によって支払い面で顧客に便宜を図り、それがCSにつながった一つの事例だといえる。
現在、向かうところ敵なしとも見える味千。しかし、「1日3食、人の胃袋が求める食事量は決まっている。全ての外食ブランドは弊社にとってライバルです」(王氏)と兜の緒を締めることも忘れない。 (了)
(※本ニュースは、漫歩創媒が発行した「Whenever BizCHINA」の転載です)
富士通(中国)信息系統有限公司
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